「実家暮らしなんだから、3万円くらい急がなくていいだろ」借りた金を1年返さない彼。新作ゲームを前に、彼の手が止まった瞬間
封筒に入れて渡した、家賃の3万円
大学生のころ、私は実家から学校に通い、夕方はパン屋でアルバイトをしていました。
同じ大学の彼は一人暮らしで、よく「お金がない」と口にしていました。
ある日、学食で向かい合っていると、彼が少し声を落としました。
「今月、家賃が足りなくてさ。給料が入ったらすぐ返すから、3万円だけ貸してくれない?」
家賃なら仕方がないと思い、私は翌日、ためていたアルバイト代から3万円を下ろしました。
封筒に入れて渡すと、彼は「助かった。本当にありがとう」と言って、かばんにしまいました。
ところが、給料日を過ぎても返済の話はありません。
私から聞くと、彼は申し訳なさそうに手を合わせました。
「ごめん。今月もちょっと出費が多くて…来月でもいい?」
それからも返済は先延ばしになり、気づけば1年がたっていました。
半年ほど過ぎたころからは、私がお金の話をすると、彼は目をそらして別の話を始めることも増えていました。
3万円は学生だった私にとって小さな金額ではありません。
その間、私はパン屋のシフトを増やし、楽しみにしていたサークルの合宿も見送りました。
発売日の夜、友人の前で止まった手
ある夜、彼に呼ばれてアパートへ行きました。
部屋に入ると、テレビの前に見慣れないゲーム機が置かれています。
その日発売されたばかりのゲームを、彼と同じ大学の友人が並んで遊んでいました。
「来たんだ。そこ座ってて」
彼はゲームを続けたまま言いました。
私はその場に立ったまま、聞きました。
「ねえ、3万円は?」
彼がようやくこちらを振り返ります。
「え、今その話する?」
「だって、もう1年だよ」
彼は少し面倒そうな顔をして、再びテレビへ視線を戻しました。
「実家暮らしなんだから、3万円くらい急がなくていいだろ」
その言葉を聞いて、私は言葉を失いました。ふとテレビの前を見ると、新しいゲーム機と新作のゲームがあります。
「……それを買うお金があるなら、3万円は返せたよね」
彼の手が、コントローラーの上で止まりました。
すると、隣にいた友人が彼のほうを見ました。
「え、まだ返してなかったの?」
彼は何も答えませんでした。さっきまで聞こえていたゲームの音だけが、部屋に流れていました。
私は彼を見て言いました。
「返せないなら、せめてちゃんと話してほしかった。もういい。3万円で、どういう人なのか分かったから」
友人も黙ってコントローラーを置きました。
私はそのまま部屋を出ました。彼とは、それから一度も会っていません。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














