「母さんの年金から、小遣い3万は当然」買い物は全部俺だと胸を張り、実家で母をこき使う弟。得意顔が消えた
土曜のお昼、実家の縁側で
縁側に寝そべった弟が、台所の母に昼ごはんをせかしました
縁側に寝そべった弟が、スマホを手にしたまま、家の奥へ声を投げました。
「昼飯、まだ?」
10月の土曜のお昼。月に2回、実家に顔を出す私は、その朝、70代の母と坂の下の店へ買い物に出かけていました。戻ったとき、弟は縁側で眠っていました。母は先に台所へ入り、私は買い物の荷物を整理してから、裏の木戸を通って庭へ回ったところでした。
2つ下の弟は、半年前に離婚して、この家に戻ってきました。今は母と2人暮らしです。和室の奥の台所の入口で、母は困ったように眉を下げていました。
そんな母の様子を見て、私は弟に声をかけました。
「母さんは、あんたの係じゃないわよ。」
弟は、米10キロを自分が担いで帰ったと言いました
母はお昼の支度に、台所の奥へ下がりました。弟はのっそり起き上がって、縁側にあぐらをかきます。スマホを板の上に伏せて、私に言い返してきました。
「母さんの買い物は、全部俺が行ってる。」
「米10キロ、俺が担いで帰ったんだ。」
今日もだぞ、と弟は自分の肩をたたきました。今日の米、と聞いて、私はコートの袖を握りました。つい先ほど、母と買い物から帰ってきたばかりだったからです。
弟は、担いでそのまま台所の前に置いたと笑いました
「担いでそのまま、台所の前に置いた。」
「カートなんて、触ったこともない。」
あんな年寄りくさい物、と弟は鼻で笑います。台所の奥で、やかんが鳴り始めていました。
買い物を自慢する弟の嘘
年金から小遣い3万と言われ、私は縁側に背を向けました
「母さんの年金から、小遣い3万は当然。」
離婚も性格の不一致で、向こうの家でも家のことは全部俺がやっていた、と弟は続けます。
「たまに来て、口を出すだけだろ。」
言い返しかけて、のみこみました。春に一度、弟と言い争ったとき、母に『今はそっとしておいて』と泣かれたのです。あの日から、この家で弟と言い争うことだけは避けていました。
けれど、母の年金の話だけは、聞き流せません。買い物からの帰り道、母は毎月弟に渡している3万円の小遣いを、もうやめたいと私に相談していました。自分の生活費にも余裕がなく、弟にどう伝えればいいのか悩んでいたのです。
私は縁側に背を向けて、庭の奥へ歩き出しました。
私は母の赤いカートを、縁側の前まで転がしてきました
ごろごろと音を立てて、私は物置の陰から、母の赤いキャリーカートを転がしてきました。縁側の前で止めます。
荷台には、白い米袋が載ったまま。台所の前には、袋ひとつありません。
「台所の前じゃなく、カートの上よ。」
弟の目が、米袋の上で止まり、口の端がひくつきました。
弟は、さっきたたいた肩に手を置いたまま、うなだれました
カートの音に、母が台所の入口へ戻ってきました。
「カートは、俺が引いてきたんだ。」
「触ったこともないくせに。」
実際には、その日の朝、私が母と坂の下の店で米を買い、2人でカートを押して帰ってきたのです。
母から聞いたところ、朝、米の買い出しを頼まれた弟は『あとで』と答えたきり、縁側で寝ていたそうです。私たちが帰ってきたときも弟は眠っており、米袋に触れてさえいませんでした。
米びつはまだいっぱいなので、物置にしまうつもりで、私が陰にカートを止めておいたのです。それなのに弟は、自分が米を担いで帰ったと言い張っていました。
私は母の顔を見ました。母は少しためらったあと、小さくうなずきます。帰り道で相談していた小遣いの件についても、気持ちは変わっていないようでした。
「小遣いの3万は、今月からなしよ」と私は告げました。母は、弟からそっと目をそらします。全部俺がやっている、だから小遣い3万は当然。その理屈が、母の前で崩れました。
弟は縁側に座ったまま、さっきたたいた肩に手を置いて、背中を丸めていました。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














