世界最大の宗教「キリスト教」の中心人物であるイエス・キリスト。
その死と復活を信じる者は世界に20億人以上。しかし、そんなイエスが実は日本に来ていたという都市伝説があることをご存じでしょうか?
舞台は、日本の北端・青森県の戸来(へらい)村。そこには、世界の常識をくつがえす“墓”がひっそりと存在しています――そう、「キリストの墓」です。
今回は、にわかには信じがたいこの“イエス渡来伝説”を、歴史の影と陰謀論、そしてロマンとともにひも解いてみましょう。
青森・戸来村にある「キリストの墓」
日本の片田舎・青森県新郷村(旧戸来村)。ここに存在するのが、“十来塚(じゅうらいづか)”と呼ばれるふたつの小さな塚。その案内板には、こう書かれています。
「この塚は、イエス・キリストが日本で106歳まで生き、死後埋葬された場所である」
実際に“キリストの墓”とされる場所には、毎年「キリスト祭」が開かれ、村民が古くから受け継ぐ“謎の盆踊り”を奉納しています。
この奇妙な風習が、さらに伝説のリアリティを深めています。
なぜ日本に?――封印された「もう一つの聖書」
戸来村に残る“竹内文書”や“戸来村伝承”によると、キリストは若き日に仏教や東洋の教えを学ぶため、シルクロードを通って日本へと渡ったのだとか。
そして、故郷ユダヤ(イスラエル)に帰ったのち十字架刑に処されるはずだったが、身代わりに弟・イスキリが処刑されたというのです。イエス本人は密かに日本へ逃れ、青森で余生を過ごした――という説。
この一連の伝承は、いわば「もう一つの聖書」とも言える内容を含み、戦前には「国家機密扱い」されたとする陰謀論も存在します。
「戸来(へらい)=ヘブライ」? 言語と習俗の不思議な一致
この都市伝説を支える一つの根拠が、戸来村という地名。「へらい」という発音が、ヘブライ(Hebrew)=ユダヤ人を示す言葉に近いという説があります。
また、村に伝わる言い伝えや風習の中には、古代ユダヤ文化と類似する点がいくつもあると言われています。
例えば:
・子どもの額に×印を書く風習(ユダヤ教の聖別と類似)
・山岳信仰の神社に“契約の箱”を思わせる神輿の形
・古代ヘブライ語と似た発音の祭事用語
など、まるで日本とユダヤが深いルーツでつながっていたかのような“偶然”が積み重なっています。
竹内文書、失われたアーク、そしてフリーメイソン
この手の都市伝説に欠かせないのが、「竹内文書(たけうちもんじょ)」と呼ばれる古文書です。これは戦前に竹内巨麿氏が記したとされ、日本の皇室と古代ユダヤがつながっているという内容が書かれています。
この中では、イエスだけでなくモーセやノア、さらにはアーク(契約の箱)も日本に“保管された”とまで記されており、歴史学界では当然ながら“偽書”扱いされていますが、都市伝説ファンの間では「本当すぎて消された」文書として今なお語り継がれています。
さらに、フリーメイソンの象徴とされる“目”や“三角”が、日本の古社や寺にも散見されるとして、「世界の起源は日本にあるのでは?」という説を後押しする声も根強く存在します。
では、本当にイエスは日本に来ていたのか?
正直なところ、歴史的証拠はほとんどありません。しかし、戸来村の人々は代々この話を信じてきました。そして、なぜか海外のメディアや歴史研究家もこの場所を訪れ、一定の注目を集めているのも事実です。
真実か、それとも作られた神話か――。ただ、こういった伝承が語り継がれているという事実そのものが、人々の心を惹きつけてやまない理由なのでしょう。
結論:伝説は、世界の常識を揺るがす“もうひとつの視点”
イエス・キリストが日本に来ていたという話は、突拍子もないものに聞こえるかもしれません。でも、私たちが「当たり前」と思っている世界史の裏には、まだ語られていない“物語”が埋もれているのかもしれません。
戸来村の静かな風景の中に、世界を変えるヒントが隠れている――そんな想像力が、都市伝説の醍醐味なのです。