理想のイクメンはすぐ隣にいた
「ねぇ、今日も悠斗くんのパパ、運動会の準備に来てくれてたよ」
私が何気なくそう言ったとき、夫はテレビから目も離さず、「へぇ~」とだけ。
うちの夫・直樹は、いわゆる“ザ・昭和型”。
家事は「手伝う」というスタンスだし、育児も“やってるつもり”の自己満が多い。
そんな中、保育園で仲良くなった“悠斗パパ”は、いつもにこやかで、保護者会にも積極的。
運動会の時なんて、リレーで走る子どもたちのために、前日からテントを張りに来ていた。
それを見て、ふと、思ってしまった。
「あの人がパパだったら、もっと助かったかもな」
ついに口にしたあの一言
ある晩、夕食後に娘が熱を出した。私は慌てて保冷剤や体温計を探し、連絡帳を準備。
その間、夫はソファでスマホをいじったまま。
「ちょっと手伝ってって言ってるじゃん!」
私の声が、思ったより大きく響いた。
夫は不機嫌そうにのそっと立ち上がりながら、言い返した。
「言ってくれなきゃ分からないし。今やろうとしてたんだけど?」
そこで、私の中の何かがプツンと切れた。
「悠斗くんのパパは、言わなくても動いてるよ!」
言ってしまった。
夫の顔が、一瞬、固まった。
静かな夜と胸の痛み
その夜、夫はいつもより静かだった。
娘を寝かしつけた後も、目を合わせてくれなかった。
私だって、分かってる。
比べちゃいけないって。
それぞれの家庭に、それぞれの事情があることも。
でも、心のどこかで、“もっと頑張ってよ”って思ってしまう自分もいる。
そして、夫は小さくこう呟いた。
「比べられるの、結構つらいんだけど」
夫婦って「チーム」だったはずなのに
それから数日、私は自分の言葉を何度も思い返した。
夫は完璧じゃない。私もそう。
でも、最初から“役割”を決めつけて、足りないところばかり責めていたのは、私かもしれない。
次の保育園行事、私はあえて夫に頼んでみた。
「〇〇の準備、手伝ってもらえる?」
すると彼は、照れ臭そうに「うん、任せて」と返した。
隣の芝は青く見えるだけなのかもしれない
パパ友が良く見えるのは、たまたま“よそゆきの顔”を見てるだけかもしれない。
本当のパートナーシップは、他人と比べず、ふたりで“育てていく”ものなんだと、少しだけ思えた。