「夜のこと」って、なかなか人には話せない。
特に、結婚してからとなると、なおさら。
夫婦だからって、全部うまくいくわけじゃない。
それでも、言えないことのひとつやふたつ、誰にでもあると思う。
これは、私の“言えない本音”の話――。
恋愛と結婚の間にあった「小さな違和感」
私は30代半ば、結婚して7年目になる。
夫は真面目でやさしくて、家事も育児もちゃんと分担してくれる、いわゆる「良い夫」だ。
出会ったのは職場。お互い仕事に真剣で、付き合って2年で結婚。
恋愛中もいろんな場所に出かけたし、会話も尽きなかった。
ただ――
夜のことだけは、付き合っていた頃から「なんとなく合わないかも」と思っていた。
キスのタイミングや触れ方、テンポ、全部がどこかチグハグで、うまく“乗れない”感覚。
でも、「まあ、そんなに重視してないし」と自分に言い聞かせていた。
結婚してから、違和感は“義務”になった
新婚当初は、それでもまだ「頑張ろう」と思えた。
けれど、1年、2年と経つうちに、夜の時間が少しずつ“義務”になっていった。
彼に悪気はない。いつも同じように求めてくるだけ。
でも私は、どこかで冷めていて、心も身体も全然ついていかない。
そのうち、始まる前に電気を消して寝たふりをするのが癖になった。
“今日は無理かも”と察してもらえるように、そっと身じろぎすらやめることもあった。
相談できない、拒否もできない、けど「好きじゃないわけじゃない」
一度、「もう少しゆっくりしてくれたら嬉しい」と言ってみたことがある。
でも彼は「え、そうだったんだ。気づかなくてごめん」と言っただけで、根本的には変わらなかった。
それが悪いとも言えない。彼は彼なりに一生懸命なのだと思う。
私はただ、「夜の相性が悪い」と言ってしまえば、何かが壊れてしまいそうで怖かった。
だから、黙っていることを選んだ。
本音は、たったひとこと
もし、本当の本音を言えるなら。
「あなたのことは嫌いじゃない。
でも、夜の私は、あなたと少しずれてるの。
それでも一緒にいたいと思うのは、本気であなたを大切に思ってるから。」
そんなことを、言える日は来るんだろうか。
今も私は、夜になるとそっと背を向けて、
静かに、心の距離を埋められずにいる。
編集後記
夜の相性って、恋人の頃は意外とスルーできるけれど、夫婦になると“逃げ場がない”問題でもありますよね。
誰にも言えず抱え込んでいる人、もしかしたら、あなたのまわりにもいるかもしれません。
「性の悩み=下ネタ」じゃない。
もっとちゃんと、大人同士で語れる空気があったらいいのに。
そんなことを思わずにはいられない、本音のストーリーでした。