要注意人物の老人
これは私がコンビニでアルバイトをしていた時の、忘れられない体験談です。
ある蒸し暑い日の午後、レジは昼休憩の会社員の方々でごった返していました。
そんな忙しい時間帯に、あの老人は現れました。
彼は以前から小銭を投げたり、タメ口で命令したりと、スタッフの間でも要注意人物として知られていました。
私がレジでお会計を済ませ、商品を袋に入れている時のことです。
箸を一本入れたところ、老人が突然カウンターをバン! と叩きました。
「おい! 箸は二膳つけろと言っただろ! 気の利かない女だな!」
言われていない要求でしたが、私は慌てて
「申し訳ございません」
ともう一膳入れようとしました。
しかし老人の怒りは収まりません。
「謝って済むなら警察はいらん! これだからバイトは……いいか、『お客様は神様』だぞ! 神への奉仕が足りないんだよ!」
大声に周囲のお客様も驚いて振り返ります。
理不尽な言い掛かりと恐怖で、私は思わず涙ぐんでしまいました。
店長の一喝
その時です。事務所から店長が出てきて、私の前にスッと立ちました。
店長は普段は穏やかな人ですが、その時は真剣な眼差しで老人を見据えていました。
「お客様、申し訳ございませんが、当店ではお客様への販売をお断りさせていただきます」
老人は目を丸くしました。
「あぁ? 神様に向かって販売拒否だと? 商売する気あんのか!」
店長は、震える私をそっと手で守りながら、静かですが、店内に響き渡るはっきりとした声で言いました。
「ええ、商売ですから『対価』を頂いて商品を提供します。ですが、私の大切な従業員の『尊厳』まで売り渡すつもりはありません」
老人が何か言い返そうと口を開きましたが、店長は畳みかけました。
「従業員を傷つける方は、神様どころかお客様ですらありません。ただの業務妨害です。お引き取りください。帰らないのであれば、即座に通報します」
「……二度と来るか!」
老人は顔を真っ赤にして捨て台詞を吐き、商品も買わずに足早に去っていきました。
その瞬間、並んでいたサラリーマン風の男性から「よく言った!」と声が上がり、他のお客様からも温かい拍手をいただきました。
その後、その老人が店に来ることは二度とありませんでした。
「お客様は神様」という言葉を盾にする人には、毅然とした態度で接してもいいんだと、店長の背中が教えてくれました。
素晴らしい職場と店長に出会えて、私は本当に運が良かったと感じています。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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