パン屋での割り込み
週に一度のささやかな楽しみ。
それは、近所のパン屋さんの「とうもろこしパン」を買うこと。
外はカリッ、中はもちもち。
噛むたびにコーンの甘みがじゅわっと広がる、私にとっての「幸せの味」。
入店してすぐ、いつもの棚へ一直線。
そこで目にしたのは……。
「あ! あった!」
トレイの上にぽつんと残された、最後のひとつ。
(やった、ギリギリセーフ!)
心の中でガッツポーズ。
トレイとトングを手に取り、パンの元へ歩み寄ろうとした、まさにその瞬間。
私の視界の端から、誰かが素早い動きでカットイン。
「えっ?ありえない」
私が足を止める隙もなく、その人物は迷いのない手つきで、最後のとうもろこしパンを自分のトレイへ。
「…………」
呆然と立ち尽くす私。
割り込んだご本人は、悪びれる様子もなく、むしろ「ラッキー」といった顔でレジの列へ。
喉まで出かかった文句を、ぐっと飲み込む辛さ。
(あからさまな割り込み、ちょっと悔しい……)
残されたのは、パン粉だけが散らばる空っぽのトレイ。
どんよりとした気持ちで、その空間を未練がましく見つめていた時でした。
割り込まれてラッキー?
奥の厨房から漂ってくる、濃厚なバターと焦げたコーンのたまらない香り。
そして、響き渡る店員さんの元気な声。
「とうもろこしパン、ただいま焼き上がりました~!!」
その声と共に、目の前にドン!と置かれた鉄板。
そこには、黄金色に輝く、焼きたて熱々のとうもろこしパンがずらり!
湯気がほわほわと立ち上り、パチパチとパンが歌うような音まで聞こえてきそう。
「うわぁ……!」
状況は一変。
さっき割り込んでいったあの人が持っていったのは、時間が経って冷めている「最後のひとつ」。
そして今、私の目の前にあるのは、間違いなく一番美味しい、オーブンから出たばかりの「極上の焼きたて」。
「ふふっ、これ、いただきまーす!」
私は心の中で小さく勝利宣言。
トングで挟むと潰れてしまいそうなほど柔らかいパンを、大事にトレイへ。
レジに並ぶ時、さっきの割り込みさんの背中が目に入りましたが、もう怒りは雲散霧消。
むしろ、「先に持っていってくれてありがとう」と感謝したいくらい。
家に帰って頬張ったその味。
アツアツの生地から溢れる甘みは、いつもよりずっと美味しく、そして最高の「スカッと」する味がしました。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














