失敗した一大プロジェクト
私は、数ヶ月にわたって心血を注いできた一大プロジェクトのリーダーを任されていました。
社運を賭けたとまでは言いませんが、部署にとっては非常に重要な企画でした。
しかし、結果は無残な「失敗」に終わりました。
会議室に呼び出された私を待っていたのは、鬼の形相をした上司でした。
「企画が失敗したのは、お前のせいだ!」
ドン、と机が叩かれます。
「クライアントが怒っていたぞ! 一体、どんなデータを出したんだ! お前のせいで、今までの苦労が全部パーだ!」
私は、頭が真っ白になりました。
「お前のせいだ」
と言われても、まったく身に覚えがなかったからです。
提出したデータは、何度も何度も確認しました。
チーム全員でダブルチェック、トリプルチェックを行い、完璧なはずでした。
(どこで? 私が、何を間違えたっていうの?)
あまりに理不尽な叱責に、私は納得できませんでした。
このまま濡れ衣を着せられるわけにはいきません。
私は会議室を出ると、自分のデスクで、失敗の原因をゼロから徹底的に洗い直すことにしました。
発覚したミス
クライアントに最終提出したデータは、企画の根幹をなす、非常に重要なものでした。
私は自分の作成した最終版のデータを、上司に提出しました。
その後、上司が最終承認としてクライアントに送付する手筈になっていました。
私は、サーバーに残っている送信履歴と、データのバックアップをつぶさに確認していきました。
すると、奇妙な点が見つかりました。
私が上司に提出した「最終確認済みデータ(A)」と、上司がクライアントに送信した「最終提出データ(B)」が、明らかに異なっていたのです。
ファイルの更新履歴を追うと、上司は、私が提出したデータ(A)を開き、企画の根幹となる「ある重要な数値」を、独断で変更していました。
おそらく、良かれと思っての修正だったのでしょう。
しかし、その変更こそが、今回の企画が失敗した致命的な原因でした。
上司は、自分が土壇場でデータを触ったことをすっかり忘れていたのです。
あるいは、認めたくなかったのかもしれません。
そして、クライアントから失敗を指摘された時、すべては
「私が最初から間違ったデータ(B)を提出した」
のだと思い込み、私を激しく叱責したのでした。
身に覚えのない失敗。
その原因が、まさか私を怒鳴りつけた上司本人だったとは……。
私は、この動かぬ証拠を前に、怒りを通り越して、ただただ脱力するしかありませんでした。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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