人生の絶頂
いよいよ明日、私は彼のお嫁さんになります。
結婚式前日の夜。私たちは、二人で暮らす新居のリビングで、荷物の最終確認をしていました。
「あ、このリングピロー、お義母さん褒めてくれたやつだ」
私が手作りしたリングピローを見て、彼も
「ああ、母さん、こういうの好きだからな」
と嬉しそうに笑っていました。
彼のお母さん、つまり明日から私のお義母さんになる人は、本当に優しい人でした。
初めて会った時から「息子の選んだ人なら」と私を温かく受け入れ、「娘ができたみたい」とまで言ってくれていました。
料理を教わったり、一緒にお茶をしたり。
私は、彼だけでなく、お義母さんのことも大好きでした。
こんなに幸せでいいんだろうか。私は、人生の絶頂にいました。
隠されていた真実
その時でした。 さっきまで笑っていた彼が、ふと真顔になり、私の手からリングピローを取り上げ、テーブルに置きました。
「……どうしたの?」
「……ごめん。ずっと、言わなきゃいけないことがあった」
彼の神妙な様子に、私の胸がざわつきました。
忘れ物? 式場のトラブル?
「母さん、お前のこと、嫌いだって」
「…………え?」
一瞬、何を言われたのか分かりませんでした。
今、なんて?
「お義母さんが、私を、嫌い?」
「ああ。……いや、大嫌い、かな」
彼は、信じられない言葉を続けました。
「初めて会った時から、ずっと反対されてた。お前は息子をたぶらかす女だって。家柄が釣り合わないって」
(嘘だ。だって、あんなに優しかったのに)
(「娘ができたみたい」って、あれは?)
「じゃあ、今までのあの態度は……!」
「全部、俺に言われて無理してたんだよ。俺が『いいから会ってくれ』『仲良くしてくれ』って頼み込んだから。母さん、ずっと我慢してたんだ」
頭が真っ白になりました。
幸せだと思っていたのは、私だけ。
私は、ずっと値踏みされ、拒絶されていたのです。
「なんで……なんで、今言うの……?」
声が震えます。
明日、結婚式なのに。
すると彼は、もっと最悪な事実を告げました。
「さっき、母さんから電話があった。『やっぱり、あんな女との結婚は認められない。明日の式には出ない』って」
「……!」
「だから、もう隠し通せないと思って。ごめん」
私は、その場に崩れ落ちそうになりました。
お義母さんに嫌われていたことよりも、それを知っていながら平気な顔で私に嘘をつき続けた彼にも、そして、人生で一番幸せなはずの結婚式前日に、すべてが壊れる音を聞かされたことにも。
涙も出ませんでした。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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