実家に来てくれない夫
「お正月くらい、私の実家に顔を出せないの?」
年末が近づくと、我が家では毎年同じ口論が繰り広げられます。
夫は、結婚してから一度も私の実家に来てくれません。
結婚の挨拶こそ済ませましたが、それ以降「お前の親と会いたくない」の一点張りなのです。
「どうして? 私の両親が何かした?」
「いや、してないけど」
「じゃあなんで? 理由を言ってくれないと納得できないよ」
私が詰め寄っても、夫は「なんとなく」とか「気まずいから」と曖昧な返事をして逃げるばかり。
私の両親は、夫のことを悪く言うどころか「仕事が忙しいんだろうね」「体に気をつけてね」といつも気遣ってくれています。
それなのに、頑なに会おうとしない夫の態度に、私は申し訳なさと苛立ちを募らせていました。
そんなある日、夫の実家へ遊びに行った時のことです。
夫が地元の友人と長電話をしている間、私はキッチンで義母と一緒に夕食の準備をしていました。
義母はとても話しやすく、良い人です。
私はつい、悩みを相談してしまいました。
「お義母さん、実は彼、私の実家に行くのをすごく嫌がるんです。私の両親も寂しがっていて…」
すると、野菜を切っていた義母の手がピタリと止まりました。
そして、困ったような、申し訳なさそうな顔で私を見て、小さなため息をつきました。
「あの子、まだそんなこと言ってるの? 本当に情けないわねえ…」
「え?」
衝撃的な本音
義母は声を潜めて、衝撃的な本音を漏らしました。
「あの子ね、あなたの実家に行くと『自分がちっぽけに見える』って拗ねてるのよ。あなたのお父様、現役時代は大きな会社の役員だったでしょう? それに比べて自分は…って、勝手に劣等感を抱いてるだけなの」
点と点が、一気に線で繋がりました。
私の父は確かに定年まで懸命に働いて出世しましたが、家ではただの穏やかな好々爺です。
夫に対して偉そうな態度を取ったことも一度もありません。
それなのに、夫は勝手に父の肩書きに怯え、自分のプライドを守るためだけに「会いたくない」と駄々をこねていたのです。
「ただのプライドだったなんて…」
理由が分かった瞬間、夫への怒りは呆れへと変わりました。
その日の帰り道、助手席でふんぞり返る夫の横顔を見ながら、
「次は絶対に引きずってでも連れて行こう」
と心に固く誓いました。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
******************
心に響くストーリーをもっと読みたい方
【他のおすすめ短編小説を見る】
******************
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。














