本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
遺産は長男が継ぐもの
これは、父の葬儀が終わって数日後の出来事です。
私と3つ上の兄は、実家のリビングで遺産整理のために向かい合っていました。
父は地元でも名の知れた実業家で、羽振りの良さそうな生活をしていました。
そのため兄は、莫大な遺産があると信じて疑っていなかったのです。
「いいか。うちは代々、長男が家を継ぐことになってるんだ。土地も屋敷も、預貯金も、俺が全部管理する。お前は嫁に出た身なんだから、遺産放棄の書類にサインしてくれればいい」
兄は開口一番、そんなことを言い放ちました。
私が「今は法律でも兄弟平等だよ?」と反論しても、兄は聞く耳を持ちません。
「遺産は長男の俺が絶対に貰う」「お前には一円もやらん!」と、顔を真っ赤にして怒鳴り散らす始末。
昔からお金に執着する性格でしたが、ここまでとは思わず、私は呆れてしまいました。
大型金庫の中身
そして、父の書斎にある大型金庫を開ける時が来ました。
「親父のことだ、隠し財産がどっさり入ってるはずだぞ」兄は浅ましい笑みを浮かべながら、業者に鍵を開けさせました。
重厚な扉が開くと、中にはぎっしりと詰まった書類の山。
「ほら見ろ! これ全部、権利書や株券じゃないか!?」兄は興奮して、書類の束を鷲掴みにしました。
しかし、一番上の書類を見た瞬間、兄の動きがピタリと止まりました。
「……え?」 兄の手が震え出し、パラパラと書類が床に散らばります。
私が拾い上げると、目に飛び込んできたのは『金銭消費貸借契約書』つまり借用書の文字。
しかも、宛先は銀行だけでなく、怪しげな業者も混ざっていました。
父の見栄っ張りな生活は、すべて借金で成り立っていたのです。
その総額は、実家の資産をすべて売っても到底返せない額でした。
「お兄ちゃん、さっき『遺産は全部俺がもらう』って言ってたよね? マイナスの財産も全部よろしくね」
私が冷静に告げると、兄は書類の山を前に顔面蒼白になり、その場にへたり込んでしまいました。
私はその後、速やかに相続放棄の手続きを進めました。
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