「十年住んで、こんな音は初めてだった」一年続く上足音。だが、管理会社へ初めて電話して知ったこと
一年近く、気にしないようにしていた
私は賃貸マンションに十年以上住んでいます。それまで、上の階の生活音を気にしたことはほとんどありませんでした。
ところが、ある時期に上の階へ家族が越してきてから、子どもが走るような音が聞こえるようになりました。音が強いときには、居間の天井の照明がわずかに揺れることもありました。
「十年住んでいて、こんなふうに音が続くのは初めてだな」
そう思いながらも、私は管理会社へ連絡することはありませんでした。
子どもがいれば走ることもある。集合住宅なのだから、多少の生活音は仕方がない。そう自分に言い聞かせながら、一年近く過ごしていました。
そんなある日の夕方、集合玄関の前で上の階の奥さんとばったり会いました。
「こんにちは」
「こんにちは。……あ、おめでとうございます」
顔を上げたとき、お腹が大きくなっていることに気づいたのです。
おめでたいことだと思いました。その気持ちに嘘はありません。
それなのに、頭には別のことも浮かびました。
「もう1人増えるんだ…」
そう思った瞬間、自分でも嫌な気持ちになりました。
まだ生まれてもいない子どものことを気にしているのではありません。むしろ、その一言が頭に浮かんだことで、私は初めて、一年間ずっと今の音を我慢していたのだと気づいたのです。
十年以上住んで、初めて管理会社へ電話した
その日のうちに、私は管理会社へ電話をしました。
上の階へ直接言いに行こうとは思いませんでした。感情的になりたくなかったですし、まずは管理会社に相談するほうがいいと思ったからです。
「上の階の音について、初めてご相談したいのですが……」
事情を説明すると、担当の方から思いがけない返事がありました。
「実は、ほかのお部屋からも同じようなお話をいただいています」
「……そうだったんですね」
自分だけが神経質になっていたわけではなかった。それが分かると、少しだけ肩の力が抜けました。
担当の方は、こちらから話した内容を上の階へ伝えると言ってくれました。
電話を切ったあと、私は少しほっとした一方で、もっと早く相談してもよかったのかもしれないとも思いました。
静かになった天井を見上げて思うこと
その後しばらくして、上の階の家族は引っ越していきました。
子どもが生まれ、部屋が手狭になったためだと聞きました。
私が連絡したことが引っ越しの理由だったわけではありません。
それでも、引っ越したと知ったとき、少しほっとした自分がいました。
それ以来、天井の照明が揺れることはなくなりました。
あの日、私が電話をしたのは、妊娠している奥さんを見たからではありません。
「もう1人増える」と反射的に考えてしまったことで、自分が思っていた以上に疲れていたことに気づいたからです。
何も言わずに我慢し続けていたら、いつか相手を見るだけで嫌な気持ちになるようになっていたかもしれません。
私は今も同じ部屋に住んでいます。
静かな夜、ときどき天井を見上げます。もう少し待てたのではないかと思うこともあります。それでも、直接相手を責める前に管理会社へ相談したことは、今振り返っても間違ってはいなかったと思っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














