「えっ、あのお箸で取ってるの?」旅館の朝食で注意に反発した男性。料理長が大皿を下げると態度が一変
朝食バイキングで目にした、男性の気になる行動
妻と温泉旅館に泊まった翌朝のことです。
朝食会場には卵焼きの甘い香りが漂い、バイキングの料理が並ぶ台には、皿を持った宿泊客の列ができていました。
私も妻と一緒に並んでいたのですが、なかなか列が進みません。
何だろうと思って前を見ると、二人先に並んでいた男性が、焼き魚の大皿から料理を取っていました。
ただ、その手元を見て驚きました。
男性は備え付けのトングを使わず、手にしていた箸で焼き魚を3枚取っていたのです。しかも、箸の先にはご飯粒がついていました。
「えっ、あのお箸で取ってるの…?」
隣にいた妻も気づいたようで、小さな声でつぶやきました。
さらに男性は、その箸で卵焼きを次々と皿に載せ始めました。
これだけでも気になったのですが、男性は皿がいっぱいになると、小さな袋を取り出したのです。
そして、皿に載せた卵焼きを袋へ移し始めました。
さすがに見過ごせなかったのでしょう。料理台の向こうにいた若い女性スタッフが、男性に声をかけました。
「お客様、申し訳ありません。お料理のお持ち帰りはご遠慮いただいているんです」
すると男性は、不満そうな顔で答えました。
「ええ?少しくらい、いいじゃないか」
スタッフは困った表情を浮かべながらも、続けました。
「それと、お料理を取るときは、こちらのトングを使っていただけますか?」
その言葉に、男性の表情が変わりました。
「自分が食べるのをとっただけだ!文句あるか」
急に声を荒らげた男性は、また自分の箸を大皿へ伸ばしました。
すぐ後ろに並んでいた客も足を止め、困ったように男性を見ています。
妻は小さく首を振りました。私も、あの箸で触れられた料理を取る気にはなれませんでした。
料理長が大皿を下げると、男性の態度が変わった
そのとき、調理場から白い上着と帽子を身につけた料理長が出てきました。
料理長は男性のそばに立ち、落ち着いた声で話しかけました。
「お客様、恐れ入りますが、お料理はトングでお取りいただくようお願いしております」
「だから、何が悪いんだ。箸でもトングでも、同じことだろう」
男性は納得していない様子でした。
すると料理長は、男性が手にしている箸を見ながら説明しました。
「お口に入れたお箸が料理に触れてしまうと、ほかのお客様にはお出しできないんです」
男性は何か言いかけましたが、料理長は穏やかに続けました。
「ですので、こちらの卵焼きと焼き魚は下げて、新しいものをご用意します。お持ち帰りも、食あたりを防ぐためにお断りしているんです」
そう言って、料理長は卵焼きと焼き魚の大皿を下げました。
まだたくさん残っていた料理が運ばれていくのを見て、男性は言葉を失ったようでした。
箸を持った手が止まり、しばらく大皿のほうを見つめています。
やがて、男性は小さく口を開きました。
「……そこまでとは思わなかった。悪かった」
先ほどまでの強い口調とは、まるで違いました。
「いえ。すぐに新しいものをお持ちしますので」
料理長がそう答えると、男性は袋をしまい、皿を持って自分の席へ戻っていきました。
止まっていた列も、ようやく動き始めました。
それから5分ほどたったころ、料理長が湯気の上がる卵焼きの大皿を運んできました。
「お待たせいたしました。焼きたてでございます」
妻はトングで卵焼きを2切れ取り、私のほうを見て笑いました。
「ふふ、待ったかいがあったわね」
私も思わず笑ってしまいました。
思いがけない騒動はありましたが、料理長の冷静な対応のおかげで、ようやく落ち着いて朝食を楽しむことができました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














