「親子なんだから返す必要なんてないだろ」100万円を返さない父。だが、10年分の家計簿を開いた母の一言
10年間、返してもらえなかった100万円
父に100万円を用立てたのは、10年前のことです。
車の買いかえと修理代が足りないと頼まれ、僕は迷わず自分の貯金からお金を渡しました。
ところが、それから10年たっても、父からお金が返ってくることはありませんでした。
何度か返済をお願いしたものの、そのたびに父は不機嫌になり、最後には言い合いになってしまいます。
実家に帰るたびに嫌な思いをするのもつらく、僕はいつしか、お金の話を避けるようになっていました。
それでも、100万円は決して小さな金額ではありません。
ある夜、実家の居間で父と話していたとき、僕は思い切って切り出しました。
「父さん、前に貸した100万円だけどさ。少しずつでも返してもらえないかな」
すると、父はあからさまに嫌そうな顔をしました。
「はあ? また金の話か。もういいだろ、その話は」
「いや、もう10年たってるんだよ。全部いっぺんに返してほしいって言ってるわけじゃないんだ」
僕がそう伝えると、父は新聞を乱暴にたたみ、腕を組みました。
「親子なんだから、返す必要なんてないだろ。親が困ってたら子どもが助ける。それが普通じゃないのか」
あまりの言い分に、僕は言葉を失いました。
台所から聞こえていた食器の音が、ふっと途切れました。
これ以上話しても無駄なのかもしれない。そう思った僕は、そのまま実家を後にしました。
「もう、いいや…」
帰り道、思わずそんな言葉がこぼれました。
母が10年分の家計簿を開いた日
ところが、次に実家へ帰ったときのことです。
居間の座卓に、何冊もの家計簿が積まれていました。古びた表紙のものから新しいものまで、ずらりと並んでいます。
「母さん、これ、どうしたの?」
「10年分の家計簿よ。ちょっと座って」
父も不思議そうに家計簿を見ています。
「なんだよ、急に。大掃除でも始めるのか?」
父が笑うと、母は古い家計簿を一冊手に取り、あるページを開きました。
そして、父の前に置いて、指でその一行を示したのです。
「借りた日も金額も、全部書いてあるのよ」
そこには、僕が父に100万円を渡した日付と金額が記されていました。
父は家計簿に目を落とし、それまでの笑顔を消しました。
「親子だから返さなくていいなんて、そんな話はないでしょう。この子だって、自分のお金を出してくれたのよ」
母の言葉に、父は顔をしかめました。
「……そんな話、今さら持ち出さなくてもいいだろ」
「今さらにしたのは、あなたでしょう。何度も返してほしいって言われてたじゃない」
母はそこで一度言葉を切り、父の顔を見ました。
「一度に返せないなら、毎月少しずつ返しましょう。あなたの年金から返す額を、今日ここで決めて」
そう言うと、母は紙に毎月の返済額を書き、父の前に差し出しました。
父は何か言い返そうと口を開きましたが、結局、何も言いませんでした。
しばらく紙を見つめたあと、小さくうなずきます。
「……わかったよ」
「じゃあ、これで決まりね」
母はそう言って、家計簿を静かに閉じました。
帰ろうと立ち上がったとき、父はまだ座卓の前に座り、返済額の書かれた紙を見つめていました。
玄関まで見送りに来た母が、申し訳なさそうに口を開きました。
「ずっと言えなくてごめんね」
「ううん。ありがとう、母さん。本当に助かったよ」
まだ100万円が戻ってきたわけではありません。
それでも、10年間まともに話し合えなかった返済について、父が初めてうなずいてくれました。
何より、母がずっと覚えていてくれたことが、僕にはうれしかったのです。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














