
「新入社員のまさかのミス…上司に地雷メールを送った件」送信先ミスで飛んだ、僕の社会人初日[短編小説]
「そのメール、送信先だけは確認してくれ…」
「お疲れ様です!本日もクソほど忙しかったですね!早くビール飲みたいです!課長、マジで黙れって感じでしたね〜笑」
送信ボタンを押した直後、僕は自分の“職場人生の終わり”を悟った。
――To: 課長(山口正明)
「えっ…いや…ちが…これって…」
真っ青になった僕の手元のPCには、鮮明に送信済みの記録が残っていた。よりにもよって、課長本人に送っていたのだ。昼休みに同期の佐藤に愚痴を送ったつもりだったのに。
送信キャンセル? そんなのあるわけない。Outlookはもう笑っていた。
午後2時。課長のデスクから僕の方へ向けられた視線が、妙に長い。目が合う。すぐ逸らされる。…終わった。絶対怒られる。左遷? クビ?
覚悟を決めて、課長の元へ歩いた。膝が震えるのをこらえていたら、「高木くん、少し来てくれる?」と小声。
小会議室。張り詰めた空気。
「メール、見たよ」
やっぱり来た。怒られる。冷や汗が背中を伝う。
だが次の瞬間、課長の口から出たのは、予想外の言葉だった。
「俺も…部長のこと、たまに“黙れ”って思ってるよ」
え?
「でも、メールには気をつけような」
課長はいたずらっぽく笑い、肩をポンと叩いて去っていった。
その日から僕は、課長を“心の先輩”と呼んでいる。