
何が起きた?桑名市が初のカスハラ認定
「ばかやろう」「土下座して撮影するぞ」
そんな暴言が飛び交ったのは、クレーム対応の現場でした。
2024年4月に全国初となるカスタマーハラスメント(通称:カスハラ)防止条例を施行した三重県桑名市が、6月30日、国内で初めて“公的にカスハラ認定”を行ったことを発表しました。
今回のカスハラは、市内の運輸業者からの相談で発覚しました。
該当するケースでは、荷物の破損を巡って客が配送業者を飲食店に呼び出し、商品の価格を上回る高額な弁償金を要求。さらに、
「ばかやろう」「うそつき」などの罵倒
土下座の強要
「土下座の写真を撮るぞ」と脅迫
といった行為が行われていたといいます。
業者側はこれらのやりとりを録画しており、その証拠が市のカスハラ対策委員会(弁護士など6人構成)に提出されました。2度の審議の結果、「社会通念上、妥当性のない要求」「就業環境を著しく害する」としてカスハラ認定に至りました。
桑名市の条例が異例なワケ:違反者は“実名公表”もあり得る
この桑名市のカスハラ防止条例には、非常に踏み込んだ条文があります。
カスハラ行為が認定された場合、市が本人に「警告文書」を送付
それでも改善されない場合、“氏名を公表する”という制裁措置がある
つまり、これまで企業が“泣き寝入り”しがちだった顧客からのハラスメント行為に、自治体が介入しうる体制が整ったということです。
なぜ問題視される?広がるカスハラの実態
「お客様は神様です」と言われる日本の接客文化ですが、その裏で働く側は深刻なストレスと向き合っています。
以下のような全国で実際に報告されているカスハラ事例があります:
コンビニで「マスクを着けていない」と店員を怒鳴り散らす
飲食店で料理が遅いと、皿を投げる・暴言を浴びせる
スーパーで「袋詰めが遅い」と怒鳴り、店員の手を掴んで罵倒
「ポイントがつかなかった」と電話で1時間以上怒鳴り続ける
カスハラは“暴力”だけでなく、過剰な要求・長時間拘束・人格否定の発言なども含まれます。被害を受けた従業員は心身ともに追い詰められ、退職やうつ症状に追い込まれるケースも珍しくありません。
今後どうなる?全国的なカスハラ対策に期待
桑名市の伊藤徳宇市長は「本来は国として対応すべき問題」と明言しながらも、地方から変化を起こそうとしている姿勢を強調しています。
「桑名からカスハラをなくしたい」
「頑張っている基礎自治体があることを、国にも受け止めてほしい」
この動きが全国に波及すれば、サービス業に従事する人々の“当たり前の尊厳”が守られる時代に近づくかもしれません。
最後に:顧客も「人間関係の一部」という認識を
“お客様だから”という理由で、無理な要求や暴言が許される時代はもう終わりつつあります。
顧客と店員、利用者と業者。どちらも社会を支える一員です。
桑名市のカスハラ条例は、**「一線を越えた言動には社会的な責任が伴う」**という新しい基準を提示したとも言えるでしょう。