「いいね!」、実は投稿見てない? 調べてわかった、Z世代が「いいね」を押す本当の理由
Instagramの美しい写真に、X(旧Twitter)の共感できるポスト。私たちは日々、何気なく「いいね!」ボタンを押しています。それは投稿への「共感」や「称賛」といったポジティブな感情の表れ…と、一般的には考えられています。
しかし、近年のSNS利用、特に10代・20代の若者たちの間では、「いいね!」は全く違う意味を持つ、複雑で多機能なコミュニケーションツールになっているようです。
「とりあえず全部いいねする」「内容はほぼ見てない」といった声も聞かれる中、「いいね!」を押すその意外な理由を探ってみると、情報過多の時代を生きる彼らの、リアルなSNSとの付き合い方が見えてきました。
理由①:もはや「既読」や「挨拶」代わり
まず最も多いと見られるのが、投稿内容を深く吟味せず、儀礼的に押す「いいね!」です。
これはLINEの「既読」スタンプのように、「あなたの投稿、見ましたよ」という合図として使われるケース。特にInstagramのストーリーズのように、次々と流れていくコンテンツに対しては、この傾向が顕著です。
調査などでは、「友達の投稿が流れてきたら、とりあえず全部いいねを押すのが礼儀のような空気がある」「『ちゃんと見てるよ、元気?』といった挨拶や、一種の生存確認として使っている」といった声が見られます。
相互フォローのアカウントを「巡回」して、溜まった投稿にまとめて「いいね!」を押していくのもその一例。そこにあるのは、投稿への純粋な共感よりも、「関係性を維持するためのソーシャルスキル(社交辞令)」としての役割のようです。
理由②:「後で見る」ためのブックマーク
次に意外と多いのが、「ブックマーク(しおり)」としての「いいね!」です。
例えば、「面白そうなカフェや気になるファッションの投稿は、後でゆっくり見返したいから、とりあえず『いいね!』しておく」という使い方。これはInstagramなどの保存機能に近い感覚だといいます。
X(旧Twitter)では、有益な情報や知識系のポスト、後で読みたい長文のスレッドなどを「いいね」欄にストックしておく、という使い方はもはや一般的。この場合、「いいね!」は「共感」ではなく「保存」を意味します。
理由③:「いいね返し」を期待する投資、そしてアルゴリズム対策
より戦略的な理由も存在します。それが「投資」としての「いいね!」です。
これは、自分の投稿にも「いいね!」を返してもらうことを期待して、積極的に他人の投稿に「いいね!」を押す行為。自分のアカウントを多くの人に見てもらいたいと考えている人にとって、「いいね!」は自分をアピールするための重要な布石となり得ます。
さらに、アルゴリズムを“教育”するために「いいね!」を活用する、という高度な使い方もあるようです。好きなジャンルの投稿にだけ意図的に「いいね!」を押し、SNSのアルゴリズムに自分の好みを学習させることで、おすすめのタイムラインを自分専用に最適化していく、というケースです。
なぜ「いいね!」の意味は変わったのか?
かつて「共感」の象徴だった「いいね!」が、これほど多様な意味を持つようになった背景には、圧倒的な情報過多があると考えられます。タイムラインに流れる無数の情報を、一つひとつ吟味する時間はない。だからこそ、「いいね!」はより手軽で、多機能なシグナルへと進化せざるを得なかったのでしょう。
「いいね!」は、もはや一つの感情を表すボタンではありません。それは挨拶であり、合図であり、ブックマークであり、投資でもあるのです。 次にあなたが「いいね!」を押すとき、そして誰かから押されたとき、その裏にはどんな意味が隠されているのでしょうか。少しだけ考えてみると、SNSとの付き合い方が変わるかもしれません。