不妊治療のはじまり
結婚生活も長くなり、子供を望んでいましたが、なかなか恵まれませんでした。
その状況に、夫婦の間に張り詰めた空気が流れていました。
私は不妊治療専門のクリニックに通い、自身の健康状態を入念に調べました。
結果は「現時点では大きな問題なし」というものでした。
この結果を共有し、二人で協力して解決に向かいたいと願い、夫に検査結果の用紙を差し出しました。
しかし、夫はその紙を見るなり、冷たく突き返してきました。
「お前の生活習慣の乱れが原因に決まっている」と、私の努力を全て否定したのです。
さらに「俺は健康体だから、病院に行く必要はない」と、自分の検査を断固として拒否しました。
私は深く傷つき、この問題を一人で抱え込むことになってしまいました。
そんなある朝、私はクリーニングに出すために夫のスーツのポケットを整理していました。すると、くしゃくしゃになった小さな領収書が出てきました。
夫が隠していた事実
そこには、近所の薬局の購入記録と、見慣れないクリニックの名前が印字されていました。
クリニック名は「〇〇泌尿器科」とあり、裏には次回の予約日時がメモされています。
なぜ夫が、私に内緒で泌尿器科に?しかも、不妊治療の専門クリニックではなく、近所のクリニックにこっそり通っていた事実に、私は動揺しました。
夜遅く帰宅した夫に、その領収書を突きつけて問い詰めました。
夫は顔面蒼白になり、しばらく沈黙した後、重い声で話し始めました。
「実は、俺、お前に隠れてずっと検査を受けていたんだ」と。
彼は、私が治療を始めた頃から、自分も密かに検査を続けていたことを告白しました。
そして、残念ながら子供ができない原因は、彼自身にあると判明したことを打ち明けたのです。
自分のプライドと、原因が自分にあるという事実を受け入れるのが怖くて、私を責めることでごまかそうとしていたと涙ながらに謝罪しました。
私は、彼が一人で抱えていた重圧と罪悪感を知り、彼を責める気持ちはなくなりました。
原因が明確になったことで、私たちは初めて、夫婦二人でこの問題に本当の意味で向き合えるスタートラインに立つことができたのです。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
******************
心に響くストーリーをもっと読みたい方
【他のおすすめ短編小説を見る】
******************
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。














