本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
育休に理解のない上司
同じ会社で働く夫と結婚し、現在私は妊娠8ヶ月を迎えています。
お腹の子に会える楽しみと同時に、私には一つだけ大きな不安がありました。
それは、夫の直属の上司である営業部の「課長」の存在です。
夫は以前から「子供が生まれたら、絶対に育休を取って一緒に育てたい」と言ってくれていました。
仕事熱心で成績も優秀な夫の決断を、私は心から嬉しく思っていました。
しかし、その課長は絵に描いたような昭和気質の人間で、「男は仕事、女は家庭」という価値観を隠そうともしない人だったのです。
ある日、私が夫に書類を届けるために営業部へ立ち寄った時のことです。
夫が席を外していたため近くで待っていると、課長が私に気づき、ニヤニヤしながら近づいてきました。
「おい、聞いたぞ。お前の旦那、育休とりたいんだって?」
私が「はい、夫婦で話し合って決めました」と愛想よく答えると、課長は急に真顔になり、吐き捨てるように言いました。
「あのな、はっきり言うけど『育休とる男は必要ない』んだよ。男は仕事で稼いでナンボだろ。オムツ替えなんかでキャリアに穴あけて、何がしたいんだか。そんな甘ったれた奴、戻ってきても席があるか分からんぞ?」
上司に突きつけた事実
それは、妻である私を通じた、夫への明白な脅しでした。
あまりに理不尽な言い草に、頭の中で何かが切れる音がしました。
しかし、ここで感情的に言い返しては夫の立場が悪くなるだけです。
私は大きく深呼吸をして怒りを鎮めると、にっこりと微笑んでスマホを取り出しました。
「課長、もしかして今朝配信された『社長直轄の通達メール』、まだご覧になっていませんか?」
「あ? なんだそれ」
「今年度からの人事評価制度の変更ですよ。そこにはっきりと書かれています。『男性社員の育休取得を妨げる言動、および取得率が著しく低い部署の管理職は、コンプライアンス違反としてボーナス全額カット、および降格処分の対象とする』と」
私は画面を拡大して課長の目の前に突きつけました。
「夫、今日このあと正式に申請書を持っていく予定なんです。まさか、ボーナスを棒に振ってまで『必要ない』なんて突き返したりしませんよね?」
課長の顔からは、みるみる血の気が引いていきました。口をパクパクさせ、額には脂汗が滲んでいます。
「じ、冗談に決まってるだろ! 部下の家庭を大事にするのも上司の務めだ! 大歓迎するよ!」
その後、夫の育休申請は驚くべき速さで承認されました。青ざめた顔で判子を押す課長の姿を思い出すたび、私は今でもスカッとした気分になります。
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