流行語大賞への選出が波紋を広げる高市首相の言葉と遺族の切実な訴え
2025年の「新語・流行語大賞」が発表され、高市早苗首相が自民党総裁選時に口にした「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」というフレーズが年間大賞に選出されました。この決定を受け、過労死で家族を亡くした遺族らが記者会見を開き、強い懸念を表明しています。
高市首相は選出に際し、国民に働きすぎを強いる意図はないと釈明していますが、発言当時は党員に対し「馬車馬のように働いてもらう」「ワーク・ライフ・バランスを捨てる」といった過激な表現も並んでいました。時代の逆行とも取れる言葉が「今年の顔」として称賛される現状に、社会の在り方を問う声が噴出しています。
SNS上でもこの話題は大きな議論を呼んでおり、ユーザーからは批判的な意見が相次ぎました。
「この言葉が大賞になるなんて、過労死遺族の気持ちを考えたらあまりに無神経すぎる」
「ワーク・ライフ・バランスを捨てると公言するリーダーがトップにいる国で、働き方改革が進むとは思えない」
「今の時代に求められているのは効率や健康であって、根性論を美化することではないはずだ」
このように、言葉の影響力を危惧する声が目立っています。
一方で、首相個人の覚悟として受け止める層からは、
「それくらいの気概を持って国を導いてほしいという期待の表れではないか」
「政治家としての決意表明をそのまま労働者への強要と結びつけるのは飛躍している」
という意見も見られました。しかし、言葉が独り歩きし、現場の労働環境に「滅私奉公」を再燃させる火種になることを恐れる空気感は無視できないほどに広がっています。
会見に出席した中原のり子さんは、医師だった夫を過労自殺で失った経験から、受賞は家族にむち打つような行為だと憤りを隠しませんでした。影響力の大きい立場にある政治家が、どれほど自身の言葉に責任を持つべきか。流行語という華やかな舞台の裏側で、命を削って働く現実と向き合う人々の、冷たい水を浴びせられたような心の痛みが伝わってきます。
効率化や多様性が叫ばれる令和の時代において、トップが掲げた「働く」ことへの執着は、多くの人にとって共感よりも「恐怖」や「違和感」として映ったのかもしれません。
流行語は世相を映す鏡と言われますが、今回の選出は、私たちが守るべき生活の尊さを改めて考え直す、重い宿題を突きつけられたような気がしてなりません。














