本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
遺産を狙う兄の暴挙
父の葬儀が終わって数日後のことです。
実家で私が遺品整理をしていると、普段は寄り付きもしない兄が突然やってきました。
兄は昔から金遣いが荒く、消費者金融にお世話になることもしばしば。
「親父、タンス預金とか隠してただろ? 俺、ちょっと支払いがヤバくてさ。遺産の前借りってことで、金庫の中身もらうわ」
兄はそう言うと、制止する私を突き飛ばし、寝室にある古い手提げ金庫を引っ張り出しました。
「暗証番号なんて、どうせ俺の誕生日とかだろ」
カチャカチャとダイヤルを回すと、予想通り「カチッ」と音がして蓋が開きました。
「へへっ、やっぱりな! さあ、いくら入ってるかな~」
兄は下卑た笑みを浮かべ、金庫の中を覗き込みました。しかし、次の瞬間、彼の動きがピタリと止まりました。
札束の代わりに残されていたもの
「……は? なんだこれ。金がねえぞ!」
金庫の中に入っていたのは、札束でも通帳でもなく、一冊のボロボロの大学ノートだけでした。
兄は苛立ちながらそのノートをパラパラとめくりましたが、数ページ読んだところで、その顔色がみるみる変わっていきました。
そこには、父と母の筆跡で、金銭の出納記録がびっしりと書かれていたのです。
『〇月〇日、〇〇(兄)の借金返済のため100万円送金』
『〇月〇日、〇〇が事故を起こした示談金として50万円支払い』
『〇月〇日、〇〇が会社をクビになった時の生活費援助……』
そう、両親は兄が作るトラブルのたびに、自分たちの老後資金を切り崩して尻拭いをしていたのです。
そして、最後のページには震える文字でこう書かれていました。
『これで私たちの蓄えは底をついた。けれど、息子が犯罪者にならず、まっとうに生きてくれるなら安いものだ。〇〇(私)には何も残してやれなくて申し訳ない』
兄は、自分がすでに遺産以上のものを受け取っていたこと、そして両親が文句一つ言わずに守ってくれていたことを知り、その場に崩れ落ちて号泣しました。
「俺は……俺はなんてことを……」
その後、兄は心を入れ替え、真面目に働き始めました。
もちろん、実家の家や土地の相続権は「俺には貰う資格がない」と全て放棄してくれました。
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