出典:若林正恭インスタグラム(masayasuwakabayashi)
お笑い芸人の枠を超えた文才か、それとも単なる知名度の勝利か
お笑いコンビ、オードリーの若林正恭さんが書き下ろした初の小説『青天』が、発売からわずか2週間で累計発行部数28万部を記録するという驚異的なヒットを飛ばしています。芸能人が本を出せば話題になるのは世の常ですが、この数字はもはや一過性のタレント本という枠を大きく逸脱していると言わざるを得ません。
かつてキューバ旅行記で斎藤茂太賞を受賞するなど、エッセイの名手として知られていた若林さんですが、ついに挑んだ物語の世界でもその筆力を見せつけました。舞台は4四半世紀前の東京。強豪校に敗れた高校アメフト部の部員が、引退後の空虚な時間の中で再び自分と向き合う姿を描いています。タイトルの『青天』とは、アメフトで仰向けに倒されることを意味しており、あえて敗者の視点から物語を紡いでいる点に、彼のひねくれた、しかし誠実な作家性が宿っています。
しかし、この熱狂を冷静に眺める層がいるのも事実です。純文学やハードな小説を好む読者からは、タレントという下駄を履かせた評価ではないかという厳しい目も向けられています。SNS上では、作品の完成度を称賛する声と、ファンビジネスの延長線上にあると捉える声が入り混じり、独特の緊張感が漂っています。
ネット上では、読了したユーザーから様々な意見が飛び交っています。
『若林氏の書籍はこれまでエッセイがメインでしたけど、主題にしてるアメフトよりも人間の内面を描いてる事が多くてストレス無く読めた』
『一貫して主人公視点だから読みやすいし、ラジオリスナー的にはそれが若林の視点に思えるから読んでて楽しいってのはあると思う』
『若林くんは作ってない人間やから素朴な心の持ち主だし、だから物事を捉える視点が素直に色々な面からチェイスできるのも彼だからこその強みかな』
こうした好意的な反応の背景には、彼が長年ラジオ等でさらけ出してきた劣等感や自意識への信頼があるのでしょう。一方で、既存の文芸ファンからは、あまりにも身内ノリが強すぎるのではないかという懸念も聞こえてきます。
結局のところ、この『青天』という現象は、若林正恭という特異なキャラクターが、現代人が抱える生きづらさを言語化する装置として機能している証拠なのかもしれません。
みっともない敗北をそのまま描くその姿勢が、効率や成功ばかりを求める社会において、逆説的な癒やしを与えているのではないでしょうか。














