「シフトを3日ぶんそろえたよ」誰にも話していない曜日変更を、同僚が知っていた日
いちばん先に声をかけてくれた人
三年ほど前まで、私は近所の店でパートをしていました。
同じ時間帯によく入っていた女性が一人いて、年は私と同じくらい。入ったばかりで右も左も分からなかった私に、いちばん先に声をかけてくれた人でした。
「分からないことがあったら、いつでも聞いてね」
その言葉どおり、締め作業の手順や棚の並べ替えなど、仕事のことをいろいろ教えてくれました。休憩室で会えば、飴を手のひらにのせてくれることもあります。
「ありがとうございます。助かります」
私も素直にありがたいと思っていました。
少し気になり始めたのは、仕事が終わる時刻を毎日のように聞かれるようになってからです。
「今日は何時に上がるの?」
答えると、「そっか。私も同じくらいかな」と返ってきます。
最初は、ただ気にかけてくれているのだと思っていました。
ところが、その少しあと、買い物に立ち寄った店でばったり会いました。私はその日どこへ寄るか、彼女には話していません。
棚の前にいた彼女は、私を見ると明るい声で言いました。
「今日も寄って帰るんだね」
私は一瞬、返事に詰まりました。
「今日も」ということは、以前にも私が寄っているところを見ていたのでしょうか。
「偶然ですね」
そう返すのが精いっぱいでした。
近所に住んでいれば、生活圏が重なることもあります。私はそう考えることにしました。
その後は、休みの日にも連絡が来るようになりました。
「今日はどこにいたの?天気よかったね」
何気ない内容なのに、なぜか返事をする手が止まるようになっていました。
誰にも話していない曜日を知っていた
私はシフトに入る曜日を変えました。
それまでとはまったく違う並びで希望の紙を書き、事務室に置かれた箱へ入れました。
誰にも相談していません。家族にも話していませんでした。
ところが次の週、休憩室で彼女に呼び止められました。
「シフトを3日ぶんそろえたよ。同じ日に入れるから」
そう言いながら、彼女は手帳を開き、日付を指でなぞってみせました。
私は言葉が出ませんでした。
シフト希望は紙に書いて箱へ入れるだけです。私は自分の希望を誰にも伝えていませんでした。
それなのに、彼女は私が曜日を変えたことを知っていました。
「……そうなんですね」
ようやくそれだけ返しました。いつものように「ありがとうございます」とは言えませんでした。
それからも、家の近くの店で彼女と何度かすれ違いました。
棚の前で会えば彼女は普通に会釈をし、私の荷物が重そうなときには「持とうか?」と声をかけてくれます。
何かをされたわけではありません。
別の同僚が、「あの人、面倒見がいいよね」と話しているのを聞いたこともあります。
今、私は別の店で働いています。彼女からの連絡も、いつからか来なくなりました。
それでもシフト希望の紙を書くと、あのときのことを思い出します。
紙を二つに折り、中身が見えないようにしてから箱へ入れる。
彼女がどうやって私の希望を知ったのか。それだけは、今も分かりません。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














