「今日も外で遊べないの?」隣家の木にできたハチの巣。困っていた僕の家に届いた一枚のはがき
窓から庭を眺める息子
夕方、4歳の息子がボールを抱えたまま、窓の前に座りこんでいた。庭はすぐそこにあるのに、この夏、息子はほとんど外で遊べていない。
「ねえ、今日も外はだめ?」
妻が困ったように僕を見る。僕も庭の奥に目をやった。
「まだやめておこう。隣の木にハチの巣があるし、今日も飛んできてるから」
「そうね。洗濯物を取り込むときも怖いもの」
原因は、隣の庭からフェンスを越えて伸びてきた木だった。その枝にハチの巣ができ、毎日のようにハチがこちらの庭まで飛んできていた。
隣の家の持ち主を僕が見かけるのは、年に3日ほどしかない。手入れされない植木は伸び、雑草の種や花の実もうちの芝生に落ちていた。
枝だけなら切ってしまいたい気持ちもあった。けれど、人の家の木に勝手に手を出して、あとで揉めるのも避けたかった。
斜め向かいの女性が教えてくれたこと
週末、庭の草を抜いていると、斜め向かいに長く住んでいる70代くらいの女性が声をかけてきた。
事情を話すと、女性は隣の家を見上げて小さくため息をついた。
「ご主人、遠くに住んでいて、なかなか来られないのよ。私、連絡先を知ってるから、手紙を書いてあげる」
「いいんですか。助かります」
「黙って我慢してても伝わらないもの。巣の写真もあったほうが分かりやすいわね」
僕は木に近づきすぎないようにしながら脚立に乗り、巣の写真を撮って女性に渡した。子どもが庭で遊べず困っていることも伝えてもらうことになった。
それから1週間後。仕事から帰ると、妻が一枚のはがきを手にしていた。差出人は、隣の家の60代くらいの男性だった。
「ハチの巣のこと、知らせてくださってありがとうございます。すぐに業者に駆除を頼みました。お子さんに怖い思いをさせて、申し訳ありません」
妻は読み終えると、ほっとしたように僕を見た。
「ちゃんと伝わってよかったね。怒られるかもって、少し心配してたから」
「うん。連絡してもらえてよかったよ」
次の週には業者がやって来て、防護服姿でハチの巣を袋へ収めた。伸びすぎていた枝も、隣家側のフェンス内に収まるところまで短く切られていった。
作業が終わるころ、斜め向かいの女性も様子を見に来た。
「年に2度、庭の手入れも頼むことにしたそうよ。これで少し安心ね」
その夕方、僕は息子と久しぶりに庭へ出た。
息子は待ちきれなかったようにボールを蹴り、そのあとを夢中で追いかけていく。
「パパ、ハチさん、もういないね」
「うん。明日もここで遊べるよ」
窓の向こうでは、妻が隣の人から届いたはがきを冷蔵庫の扉にそっと貼っていた。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














