「また隣の部屋と間違えました」毎月夜11時にドアノブを回す男性。だが、フロントで知った事実に背筋が凍った
夜11時、ドアノブを回す男性
私は月に一度、仕事で同じ町に出張します。
町にはホテルが一軒しかないため、泊まるのはいつも同じ古いホテルです。
客室は昔ながらの鍵を差し込んで回すタイプで、ドアには小さなのぞき穴があります。
最初に男性と出会ったのは、そんなホテルに泊まった夜のことでした。
突然、部屋のドアノブがガチャガチャと動いたのです。
驚いてのぞき穴を見ると、廊下には鍵を握った60代くらいの男性が立っていました。
「すみません。部屋を間違えまして」
男性は申し訳なさそうに笑い、隣の部屋へ入っていきました。
似たようなドアが続く廊下です。
実は私もその日、隣室の前で立ち止まってしまったので、間違える気持ちは分かりました。
ところが翌月、同じことが起きたのです。
その月は前回とは違う階の部屋でした。お風呂から上がって寝間着に着替えたころ、時計を見ると夜11時。
その瞬間、ドアノブが回りました。
のぞき穴に目を寄せた私は、思わず息をのみました。
先月と同じ男性だったのです。
「あの、どなたですか?」
すると男性は鍵を持った手を下ろし、こちらに向かって笑いました。
「すみません。また隣の部屋と間違えました」
「……そうですか」
「おやすみなさい」
隣でドアが開き、閉まる音がしました。
男性が口にした「また」という言葉が、妙に引っかかりました。
それでも、偶然が重なっただけだろうと思うことにしたのです。
しかし、3か月目も4か月目も同じことが続きました。
部屋の階が変わっても、夜11時になるとドアノブが回ります。のぞき穴の向こうには、いつも同じ男性。
そして決まって、申し訳なさそうな笑顔で「また隣の部屋と間違えました」と言うのです。
半年目、フロントで知った予約の秘密
半年目の朝、チェックアウトの際に、私は思い切ってフロントの50代くらいの男性に尋ねました。
「あの、いつも隣の部屋に泊まっている方って、こちらによく来られるんですか?」
「ええ。お客様と同じ日に、いつもいらっしゃいますよ」
「……同じ日に、ですか?」
係の男性は帳面を見ながら、何気ない調子で続けました。
「お客様のご予約が入った翌日に、決まってお電話をくださるんです」
その言葉を聞いた瞬間、背筋が冷たくなりました。
私が泊まる日を知ってから、わざわざ隣の部屋を予約しているということでしょうか。
でも、どうして私の宿泊日を知っているのでしょう。
出張の予定はホテルにしか伝えていません。
目の前の係の男性は、常連客の話をするように笑っています。私はスーツケースの持ち手を握ったまま、何も言えませんでした。
「来月もご予約なさいますか?」
「……はい。お願いします」
結局、私は翌月の予約も取りました。この町には、ほかに泊まれるホテルがないからです。
男性が部屋に入ってきたことはありません。廊下で会えば丁寧に会釈してくれますし、私は毎晩、鍵とチェーンをかけています。
それでも、あの笑顔を思い出すと落ち着きません。
そして、その翌月が今夜です。
部屋はまた別の階になりました。
私は寝間着のまま、ドアの前に立っています。
壁の時計が夜11時を指しました。
次の瞬間、ドアノブがゆっくりと回り始めたのです。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














