「朝の配達員さん、すぐ帰ったんですけど」営業所で訴えた女性客。だが、9時12分の記録を見て黙った瞬間
サインの要る荷物と、開いたドア
配達の仕事をしていたころ、午前中指定の荷物を届けるため、朝9時すぎにアパートを訪ねたことがありました。
その荷物は玄関先に置いて帰ることができず、対面で受け取ってもらう必要があるものでした。
インターホンを押しましたが、返事はありません。
少し待ってもう一度押し、それでも反応がなかったため、不在票を準備しようとしました。
すると、ようやくドア越しから声が聞こえた。
「今来たんですか?」
「少し前からお呼びしていました」
「そこに置いていってもらえません?」
「申し訳ありません。こちらは対面でのお渡しが必要なんです」
そう伝えると、女性客は少し困ったような顔をしました。
「今ちょっと手が離せないんですよね」
「では、いったん持ち戻ります。再配達のお手続きをお願いします」
「…じゃあ、あとで受け取ります」
女性客はそう言うと、ドアを閉めました。
私は端末に9時12分の訪問と、本人と応対したものの受け渡しには至らず、持ち戻ったことを記録しました。
夕方、営業所に現れた女性客
その日の夕方、営業所に戻ると、カウンターに見覚えのある女性が立っていました。
朝の女性客でした。
「朝の配達員さん、すぐ帰ったんですけど。もう少し待ってくれてもよかったですよね」
対応していた上司に呼ばれ、私もカウンターへ向かいました。
女性客は私を見るなり言いました。
「この人です。こっちは午前中ずっと家にいたのに、結局受け取れなかったんですよ」
責められているように感じ、私は何と答えようか迷いました。
すると上司が、まず端末の記録を確認しました。
「少々お待ちください。今朝の対応を確認しますね」
画面を見た上司は、女性客にも聞こえるようにゆっくり説明しました。
「9時12分に訪問しています。その際、お客様とも応対していますね。対面でのお渡しが必要な荷物だったため、その場ではお渡しできず、持ち戻りになっています」
女性客は一瞬黙り、画面に目を落としました。
「……そういう記録、残ってるんですね」
「はい。午前中の時間帯にはお伺いしています」
先ほどまでの強い口調は少し落ち着いていました。
上司は持ち戻っていた荷物を確認すると、女性客に声をかけました。
「こちらで受け取りの手続きをしていただければ、今お渡しできます」
女性客は「分かりました」と答え、手続きを済ませて荷物を受け取ると、そのまま営業所を出ていきました。
そのあと、上司が私に端末を返しながら言いました。
「こういうときのためにも、記録は残しておいたほうがいいね」
あの日ほど、短い記録でも自分の仕事を説明する助けになるのだと実感したことはありませんでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














