「今日も、カレーうどんで」私が服へこぼしてしまった男性。翌日、同じ男性の注文に驚いたワケ
良かれと思った気配りが裏目に
3年前の話です。
20代だった私は、ホテルの地下にある従業員食堂で、昼の受け渡しカウンターに立っていました。
料理をカウンターに置くと、社員さんが自分のお盆に乗せて席へ持っていく仕組みです。
仕事に慣れてきたころ、私は熱い料理だけは自分でお盆まで乗せたほうが親切なのではないかと思うようになりました。
うしろで盛りつけをしていた同僚にも、そんな話をしたことがあります。
「熱いものは、お盆まで乗せたほうが親切じゃない?」
「でも、カウンターに置くだけでよくない?」
「大丈夫。もう慣れたから」
その日、白いワイシャツを着た40代くらいの男性が、カレーうどんを注文しました。
私は熱々のどんぶりを持ち上げ、男性のお盆へ乗せようとカウンター越しに手を伸ばしました。
「熱いので、お気をつけください」
その瞬間、どんぶりがお盆のふちに、かつんと当たりました。
次の瞬間、茶色いカレーが男性の白いシャツの胸元に広がりました。
男性が短く声を上げ、私は頭の中が真っ白になりました。
店長と同僚がすぐに駆け寄り、ふきんを手に男性へ謝ってくれました。
男性は怒鳴ることもなく、シャツの代金は店長が払ってくれました。
私は動揺してしまい、しばらく声も出ませんでした。
片付けが終わったあと、店長は責めることなく言いました。
「こういうこともあるからね。これからは、カウンターに置くだけにしよう」
翌日、同じ男性がまたやってきた
次の日の昼、カウンターに立っていると、昨日の男性がやってきました。
顔を見た瞬間、背中がこわばりました。
昨日あんなことがあったのだから、さすがに今日は別の料理を頼むだろう。
少なくとも、カレーうどんは選ばないだろうと思っていました。
ところが、男性はいつもと変わらない様子で言いました。
「今日も、カレーうどんで」
思わず聞き返しました。
「カレーうどん、ですか?」
「はい。昨日、食べそこねたので」
近くにいた店長と同僚も、一瞬手を止めました。
私は盛りつけられたどんぶりを両手でしっかり持ち、コンロの横からカウンターまで、いつも以上に慎重に運びました。
そして今度は、お盆へ手を伸ばさず、カウンターの上にそっと置きました。
一滴もこぼれませんでした。
男性は自分でどんぶりをお盆に移すと、私のほうを見て笑いました。
「今日は、紺色のシャツで来ました」
厨房の奥から、小さく笑う声が聞こえました。
うしろにいた同僚も、笑いをこらえながら小声で言いました。
「ね。置くだけでよかったでしょ」
恥ずかしさは残っていましたが、昨日から張りつめていた気持ちが、その一言で少しだけほどけました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














