「まだ座ってるって言ってるんだよ!」閉店後も居座る酔った男性客。一本の電話のあと、店に現れた人物とは
閉店時間を過ぎても帰らない男性客
飲食店で働いていた時のことです。
閉店時間が近づき、私は空いたテーブルの椅子を上げて、床をふいていました。
店内に残っているお客さんは、奥の席にいる男性ひとりだけ。男性はかなり酔っているようで、顔を赤くし、グラスを手に天井をぼんやり見上げていました。
閉店時刻になったので、私は男性の席へ向かいました。
「すみません。そろそろ閉店のお時間なんです」
「いいんだよ、まだ」
男性は面倒そうに手を振るだけで、帰ろうとしません。
「申し訳ありませんが、片づけもありますので……」
そう伝えると、男性はグラスを置き、こちらをにらむように見上げました。
「なんだよ。客を追い出すつもりか?」
「いえ、そういうわけでは…」
「じゃあ、いいだろ。まだ座ってるって言ってるんだよ!」
男性は椅子に座り直し、腕を組みました。
「だいたい、店員が客に指図するなよ!」
急に声を荒らげられ、私は言葉に詰まりました。
閉店時間を過ぎていることを説明しても、男性は聞く耳を持ってくれません。
これ以上何を言えばいいのか分からず、私は男性の前で立ち尽くしてしまいました。
電話のあとに現れた女性の一言
そんなとき、男性の胸ポケットから携帯電話の着信音が聞こえました。
男性は舌打ちをしながら電話に出ました。
「ああ?うるさいな。いつもの店にいるよ」
電話の相手にも不機嫌そうに答え、そのまま通話を終えました。
その電話のあと、店の入口の扉が開きました。
入ってきたのはひとりの女性です。女性はまっすぐ男性の席へ向かいました。
二人の様子から、どうやら男性の奥さんのようでした。
奥さんは腰に手を当て、座っている男性に声をかけました。
「何してるの、お店の人に迷惑でしょう」
「いや、俺はただ…」
「ただ、何?もう閉店でしょ。お店の人も困ってるじゃない。ほら、帰るよ」
すると、あれほど大きな声を出していた男性が、急に黙り込んだのです。
「…わかったよ」
男性は奥さんと目を合わせず、ひざの上に手を置いてうつむきました。
つい先ほどまで私に怒鳴っていた人とは思えないほど、声も小さくなっています。
奥さんは私のほうを向き、深く頭を下げました。
「すみません。本当にご迷惑をおかけしました」
「いえ……ありがとうございます」
思わずそう答えると、奥さんはもう一度頭を下げました。
男性は奥さんに腕を引かれて立ち上がり、私と目を合わせないまま、小さく会釈して店を出ていきました。
あれほど帰ろうとしなかったのに、奥さんに声をかけられると、あっさり立ち上がったのです。
二人が出ていったあと、私はようやく肩の力が抜けました。
そして入口の札を「閉店」に返し、残っていた片づけを再開しました。
ひとりではどうにもできず、怖い思いもしましたが、最後は無事に帰ってもらえてほっとしました。
それにしても、奥さんが現れた途端に小さくなった男性の姿は、今でも忘れられません。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














