ふとした瞬間、「自分の手がやたら大きく見える」とか「部屋が急に遠くに感じる」…そんな感覚におぼえはありませんか?
それ、もしかしたら――「不思議の国のアリス症候群」かもしれません。
まるでルイス・キャロルの小説『不思議の国のアリス』のように、世界が歪んで感じられるというこの現象。
近年ではSNSやYouTubeでも取り上げられることが増え、じわじわと話題になっています。
今回は、このちょっと不思議で謎めいた「不思議の国のアリス症候群(Alice in Wonderland Syndrome)」について、わかりやすくご紹介します。
そもそも「不思議の国のアリス症候群」って?
不思議の国のアリス症候群(AIWS)は、視覚や体の感覚に異常が起きる神経症状のひとつです。
特に子どもに多く見られるとされていますが、大人が体験することもあります。
主な症状は以下のようなもの:
・自分の手足や体が極端に大きくまたは小さく感じる
・他人や物の大きさ・距離が突然変わって見える(遠近感が狂う)
・時間の流れが遅く感じる、または速く感じる
・音が異様に大きく聞こえたり、小さく聞こえたりする
この症状の特徴は、一時的であること。
数分〜数十分でおさまるケースがほとんどで、意識がなくなることはありません。
ただし、本人にとってはとてもリアルに感じられるので、不安や混乱を引き起こすこともあります。
なぜ「アリス」なの?
この症候群の名前は、その名の通りルイス・キャロルの児童文学『不思議の国のアリス』に由来しています。
作中で、アリスは体が大きくなったり小さくなったり、不思議な感覚の世界に迷い込みますよね。
この様子が、まさにAIWSの症状に似ていることから名付けられました。
ちなみに、作者のルイス・キャロル自身も片頭痛持ちで視覚の異常を体験していたという説もあり、それが作品の着想になったとも言われています(※諸説あり)。
原因はなに?
AIWSの原因ははっきりとはわかっていませんが、以下のような要因と関連していることが多いとされています:
・片頭痛(特に前兆の一部として)
・てんかん
・ウイルス感染後(EBウイルスなど)
・睡眠不足や強いストレス
・解離症状や一時的な神経の誤作動
中でも片頭痛との関連は強く、AIWSの症状が現れた後に頭痛が来るケースもあります。
子どもに多いって本当?
実はこの症状、特に小学生〜中学生くらいの子どもに多く見られると言われています。
発育中の脳が、何らかの刺激やストレスで一時的に混乱してしまうことが背景にあるのかもしれません。
ただし、成長とともに症状が自然におさまるケースも多く、必ずしも病気というわけではない点も大切です。
実際にこんな声も…
ネットやSNSでは、実際にAIWSを体験した人たちのこんな声も。
「子どもの頃、天井が急に遠くなって怖かったけど、誰にも言えなかった」
「寝る前に、耳元で巨大な時計の音が鳴ってる感じがして不安になった」
「部屋の中が“縮んで”いくように感じて、吐き気がした」
こうした不思議な感覚は、体験したことがない人にはなかなか伝わりづらく、「変なこと言ってる」と誤解されることもあるのが難しいところです。
もし自分や子どもが体験したら?
AIWSの症状が一時的で、頻度も少ないなら、心配しすぎる必要はないケースが多いです。
ただし、以下の場合は医療機関(特に神経内科や小児神経科など)への相談をおすすめします:
・頻繁に繰り返す
・生活に支障が出ている
・強い不安や恐怖を伴っている
・頭痛やけいれん、意識障害などを伴う場合
「怖い病気かも…」と焦らず、早めに専門家に相談することで安心できることが多いですよ。
最後に:不思議な感覚は「脳からのメッセージ」?
不思議の国のアリス症候群は、名前こそファンタジックですが、本人にとっては現実そのもの。
それでもこの症状は、「脳がちょっと休憩を必要としているよ」というサインかもしれません。
もし自分や家族が体験したら、まずは慌てずに、「脳のいたずらかな?」くらいに受け止めてみてください。
そして、必要なら専門機関に相談する――それが、安心につながる第一歩かもしれません。
※このコンテンツはあくまで一般的な情報の紹介です。気になる症状がある場合は、必ず医師にご相談ください。