「10万円の洗濯機を買う客だぞ、俺を先に会計しろ」閉店間際の家電量販店で急ぐ客。だが、店員が正論を毅然と対応した結果
閉店間際、会計にはすでに列ができていた
家電量販店で働いていたころのことです。閉店時間が近づくと、売り場に残っている従業員も少なくなります。
その日、私は一人のお客様の洗濯機選びを担当していました。
商品が決まり、配送日や設置場所の確認を終えたころには、すでに20時を過ぎていました。
会計へ案内する前にレジの状況を確認すると、すでに数組のお客様が待っていました。
応援を呼べる従業員も見当たらず、私はいったん洗濯機のお客様のところへ戻りました。
「ただいま会計が混み合っておりまして、順番にご案内しております」
そう説明すると、お客様は腕時計を見たあと、少し強い口調で言いました。
「10万円の洗濯機を買う客だぞ。俺を先に会計しろ」
遅い時間でしたし、何度も時計を確認されていたので、急いでいることは伝わってきました。
それでも、すでに待っているお客様を飛ばすことはできません。
「申し訳ございません。順番にご案内しております」
私はそう伝えて、頭を下げました。
金額を言えば、話は終わったかもしれない
実は、前に並んでいたのも私が接客したお客様たちでした。
大きなテレビを購入された方、冷蔵庫と洗濯機をまとめて購入された方、複数の部屋に設置するエアコンを選ばれた方。
中には40万円ほどになる会計もありました。
だから私は、一瞬だけその金額を伝えようかと思いました。
「前には、もっと高額な買い物をされた方も待っています」と言えば、納得してもらえるかもしれません。
けれど、それでは結局「高い買い物をした人ほど優先される」という話になってしまいます。
私は金額には触れず、もう一度だけ同じ説明をしました。
「順番にご案内しておりますので、もう少々お待ちください」
お客様はしばらく黙っていましたが、やがて「わかったよ。なるべく早くしてくれ」と言いました。先ほどより声は落ち着いていました。
それから十分ほどして順番が回り、会計は無事に終わりました。
帰り際、お客様は出口へ向かう途中で一度振り返りました。
「さっきは悪かったな。遅い時間だったから、ちょっと急いでたんだ」
私は「いえ、お待たせして申し訳ありませんでした」と頭を下げました。
見送ったあと、近くにいた先輩から「よく金額のことを言わなかったな」と声をかけられました。
言い返す材料はありました。でも、会計の順番は購入金額で決まるものではありません。必要だったのは、相手より強い言葉を返すことではなく、同じ案内を続けることだったのだと思います。
今でもあのときのことを思い出すと、どれだけ高い商品を買われた方でも、目の前のお客様を金額で比べないようにしようと思います。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














