「あんまり見ないほうがいいかも」電車の床に膝をついた人。気づけば周囲から乗客が消えていた
床に膝をついた人
大学生だったころ、友人と夕食を食べた帰りに、夜8時ごろの電車に乗りました。車内は座れるくらい空いていましたが、私たちは座らず、つり革につかまって話していました。
「ちょっと食べすぎたな」
「明日は昼からだったよな」
そんな話をしていたとき、隣の車両から一人の人が入ってきました。
何気なく見ていると、その人は座席には向かわず、突然、床に膝をつきました。
そして、床を触り始めたのです。
小さな声で何か言っていましたが、内容までは聞き取れません。
最初は車両を点検する人なのかと思いました。
しかし作業着ではなく、見た目だけでは何をしている人なのか分かりません。
「あの人、何してるんだろう」
私が小声で言うと、友人もその人を見ました。
「…分からない」
気づけば、周りの人が離れていた
しばらくすると、その人の近くに座っていた乗客が、少し離れた席へ移りました。
向かいにいた人も次の駅で降り、いつの間にか、その人の周囲だけがぽっかり空いていました。
誰も注意しません。車掌を呼ぼうとする人も、私が見た限りではいませんでした。
友人が小さな声で言いました。
「あんまり見ないほうがいいかも」
私もそれ以上は何も言えませんでした。
その人は車両の端まで来ると、最後のふたを閉じ、隣の車両へ移っていきました。
扉の窓越しに見ると、そこでもまた床に膝をついていました。
そのさらに先へ移っていくところまで見えましたが、それ以上は追いませんでした。
私たちに何かをしてきたわけではありません。大声を出したわけでもなく、直接迷惑をかけられた人がいたのかも分かりません。
それでも、次の駅に着くころには、さっきまでいた人の多くがその場から離れていました。
あれから十年以上たちますが、同じ人を見かけたことはありません。
何をしていたのかは、今も分からないままです。
ただ、あの姿だけは、妙にはっきり覚えています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














