「あの子、言うこと聞かないんですよ」表ではフォロー役だった先輩が課長に放っていた嘘。翌日、私が態度を変えた結果
課長席から戻ってきた指導担当の声
その日の夕方、書類を取りに行った私は、課長席のそばを通りかかったときに、思わず足を止めました。
パーテーションの向こうから聞こえてきたのは、隣の席で指導担当を務めてくれている先輩の声。
普段の柔らかい調子とはどこか違う、低くて、少し早口の話し方でした。
「あの子、言うこと聞かないんですよ」
その一言が、耳のなかで嫌な反響を残します。
(私、そんなふうに言われてるの)
頭のなかで、これまでのやり取りがざあっと巻き戻されていきました。
休憩室の優しさと、見えなかった裏側
配属直後から、その先輩は本当によく面倒を見てくれました。
マニュアルにない注意点を教えてくれて、ミスのときは「私がフォローするから大丈夫」と笑ってくれる人。
休憩室で雑談していると、自然に悩みもこぼせて、私はすっかり気を許していたんです。
直属の課長との関係や、まだ慣れない業務での迷いも、つい打ち明けていました。
「うちの課長、最初はとっつきにくいよね」と、彼女が同じ目線で頷いてくれるたびに、私はほっと息を吐いていました。
ところが、別フロアの主任格の人や、ほかの中堅から「あの件って言ってたよね?」と声をかけられることが、増えてきていたんです。
口に出した記憶のない相手の前で、自分の発言の一部だけが、文脈を削がれた形で生きていました。
たどっていけば、出どころはいつも、隣の席のその先輩。
私の話を、自分にとって都合のいい形に切り取って、周囲に広げていたようなのです。
そして、課長席から漏れ聞いた、あの言葉。表でフォローしてくれていたはずのミスは、上司の耳には別の角度で届けられていました。
声色も、肩の力の抜き方も、私の前で見せていたものとは、まるきり違っていたのです。
距離をとった日から消えない冷気
翌朝、隣の席に座る彼女は、いつもの明るい声で「おはよう」と笑いかけてきました。
何も知らないふりで「おはようございます」と返した自分の声が、自分でもひやりと響きます。
その日以降、私は彼女との会話を、業務連絡だけに絞りました。
雑談は受け流し、仕事の悩みは絶対に口にしない。質問は短く、答えも短く。打ち合わせのときだけ目を合わせて、それ以外の時間はパソコンの画面に視線を逃がしました。
休憩室で誰かと笑っている彼女の声が遠くから聞こえてくるたびに、あの場で誰かの言葉が、いま、どんな形に変えられているのだろうと考えてしまいます。
当たり前に隣にいた人の、見えない側の顔。思い出すたびに、肩のあたりに冷気がすうっと走るのです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














