「あなたの家で、こんな立派なお料理は並ばないでしょう」見下した言い方をする義母。だが、我慢出来ずに義実家を出た結果
酒盛りの脇で
正月の義実家は、朝から賑やかだった。ただし賑やかなのはリビングだけで、台所は私一人きりだ。
「早く準備してね。みんなお腹空いてるんだから」
義母はそう言い残し、義父と夫、義弟の輪に戻って酒を注ぎ合う。
私は黙って包丁を握った。何品もの煮しめを作り、伊達巻を巻き、重箱に彩りよく詰めていく。
その間、夫は一度たりとも席を立たなかった。
それどころか義父のグラスが空くたび、「親父、もう一本いくだろ?」と冷蔵庫の方へ私を呼ぶ。
「お義父さんのお酒、私が運ぶんですか」
誰も答えなかった。答える必要もない、とでも言いたげだった。
私は冷蔵庫を開け、缶ビールを取り出して義父の脇に置いた。
家政婦なら、まだ気楽だったかもしれない。
少なくとも家政婦には、決まった時間に終わりがある。
両親まで見下されて
数時間かけて、ようやく立派な御節が食卓に並んだ。
私が腰を伸ばした瞬間、義母が満足げに言い放った。
「あなたの家で、こんな立派なお料理は並ばないでしょう」
料理の出来ではなく、私の実家そのものを馬鹿にする言い方だった。
家族全員で温かく過ごしてきた我が家を、お粗末の一言で片づけられた。
その瞬間、朝から張り詰めていた糸が、ぷつりと切れる音がした。私はお玉を置き、ゆっくりと手を拭いて、静かに義母に向き直った。
もう、愛想笑いを続ける気はなかった。ずっとうつむいて働いていた私が顔を上げると、義母は一瞬、たじろいだ表情を見せた。
タクシーで実家へ
「確かに、一人で家政婦のように働くのは初めてです。うちの実家では、家族全員で協力しますので」
にこやかに、しかしはっきりと言った。
ざわついていた食卓が、一瞬で凍りついた。義母は口をぱくぱくさせるだけで、言葉が続かない。義弟は気まずそうにテレビへ視線を逃がした。
「これ以上はご迷惑でしょうから」
私はエプロンを外し、深く一礼した。
「失礼します」
そう告げて、荷物をまとめた。
夫がようやく我に返り、追いかけてくる。
「ちょっと待てよ、みんなの前で恥かかせる気か」
「恥をかかせているのは、私ではありませんよ」
玄関先で呼んだタクシーに乗り込むと、義実家がみるみる小さくなっていった。
実家に着くと、両親と兄夫婦が笑って迎えてくれた。誰に命じられるでもなく、みんなが自然に台所へ立つ。これが当たり前の景色だった。
その夜、夫からの電話が何度も鳴った。留守番電話には、しどろもどろの謝罪だけが積み上がっていく。威張っていた人たちの立場は、あの一言で完全にひっくり返っていた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














