「どいてよ、後ろで待てるでしょ」並ぶ女性を押したママ友。信じられない主張に距離をとった
見下すママ友
そのママ友は、口を開けば誰かを値踏みするような人でした。
専業主婦の自分こそ正しい、働く母親は子どもをおろそかにしている。
そんな考えを、隠そうともしません。
特売日の朝、私は彼女と一緒にスーパーの行列に並んでいました。
開店前から二十人ほどが列を作る、いつもの光景です。
私たちの前にはベビーカーを押した女性がいて、電話で誰かと話しています。
「夜勤明けで眠いけど、牛乳だけ買って帰るから」
それを聞いたママ友が、私の耳元でささやきました。
「聞いた?夜勤だって。働いて昼は時間あるでしょ、なんで前に並んでるのよ」
「別に、来た順でしょ」
私の言葉など、耳に入っていません。
彼女はベビーカーの後ろに回り込むと、その車体をぐいと前へ押しやりました。
「どいてよ、後ろで待てるでしょ」
女性がよろけ、とっさにベビーカーの取っ手を握り直します。
乗せられた子が、驚いて小さく声を上げました。
冷たい視線の中で
その瞬間、行列の空気が凍りつきました。
押された女性だけでなく、後ろに並んでいた客たちが、いっせいにママ友を見ています。
「今の、ひどくない?」
誰かが、ぽつりと言いました。それを合図にしたように、あちこちで小さな声が上がります。
「子ども乗せてるのに、押すなんてね」
四方から向けられる視線は、どれも冷たいものでした。
責めるでもなく、ただ黙ってママ友を見つめています。
声を荒げる人はいません。それでも、その静かな視線がかえって、彼女を逃げ場のない場所へと追い詰めていくようでした。
「わ、私は…ちょっと、詰めてって言っただけで」
声がうわずっています。けれど誰ひとり、彼女に同調しません。
私は前へ出て、ベビーカーの女性に声をかけました。
「大丈夫ですか。お先にどうぞ」
「……ありがとうございます」
女性が小さく頭を下げます。
その様子を、周りの客が静かに見守っていました。ママ友はというと、真っ赤になった顔をうつむけたまま、それきり一言も発しなくなりました。いつもの勢いは、どこにもありません。
やがて開店の時間が来て、列がゆっくりと動き出します。
ベビーカーの女性は、周りの客に軽く会釈をして、先に店へ入っていきました。
一方のママ友はうつむいたまま、私と目も合わせません。買い物のあいだも、彼女は一度も口を開きませんでした。夜勤明けの体で子どもを連れ、それでも順番を守って並んでいた女性を、見下す資格なんて、誰にもなかったのです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














