急ぐ人のための気遣いが、誰かを困らせている?
エスカレーターでは片側に立ち、急いでいる人のために反対側を空ける。
駅や商業施設で、そんな乗り方をしている方も多いのではないでしょうか。
一見すると周囲への気遣いに思えますが、鉄道事業者や自治体が呼びかけているのは「歩かずに立ち止まる」という利用方法です。
長年続いてきた片側空けの習慣には、転倒や接触につながる危険が潜んでいます。
歩く人だけでなく、立ち止まっている人も巻き込まれる
JR西日本などが参加するエスカレーターの安全利用キャンペーンでは、「歩かずに立ち止まろう」「手すりにつかまろう」と呼びかけています。
エスカレーターを歩いたり駆け上がったりすると、利用者自身がバランスを崩し、転倒するおそれがあります。
さらに、ほかの人と衝突し、相手を転倒させてしまう事象も確認されています。
急いでいる人のために空けたつもりのスペースが歩行を促す通路のようになり、周囲の利用者まで事故に巻き込む可能性もあるのです。
片側の手すりにしかつかまれない人もいる
片側空けの習慣で困るのは、歩行する人と接触する可能性がある利用者だけではありません。
けがや障がいなどの理由から、左右どちらか一方の手すりにしかつかまれない人もいるのです。
たとえば、右手でしか手すりを持てない人が、右側を歩行用に空けるよう求められると、安全な姿勢を保ちにくくなるでしょう。
子どもと並んで乗る人や、介助者と一緒に利用する人にとっても、片側空けが負担になる場合があります。
名古屋市も、子どもや高齢者、片側の手すりにしかつかまれない人など、さまざまな利用者がいると説明し、左右両側に立ち止まるよう呼びかけています。
自治体では「立ち止まる」を条例で定める動きも
片側空けを見直す動きは、鉄道事業者による注意喚起だけではありません。
埼玉県では2021年10月、利用者に立ち止まった状態でエスカレーターを利用するよう定めた条例が施行されました。
名古屋市でも2023年10月から条例が施行され、エスカレーターでは歩かず、左右両側に立ち止まるよう周知しています。
歩行すると、階段より大きな段差で転倒したり、ほかの利用者と接触したりするおそれがあるためです。
なお、埼玉県の条例には利用者への罰則は設けられていません。
罰するためではなく、立ち止まって利用するという意識を広めることが目的といえそうです。
まとめ
急ぐ人のために片側を空ける習慣は、鉄道事業者や自治体が呼びかける安全な利用方法とは異なります。
エスカレーターでは左右どちら側でも立ち止まり、手すりにつかまることが、自分だけでなく周囲の人を守る利用方法につながります。
参考
・JR西日本「エスカレーター「歩かず立ち止まろう」キャンペーンの実施について」
・名古屋市「名古屋市エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」














