「臨機応変にやれよ」横入りした客。だが、会計の様子に感じた違和感とは
10人ほどの列を横から抜けた客
あれは半年ほど前、平日の昼過ぎでした。私は、自分で注文し、受け取った品物を席まで運ぶ形式の店で、注文の列に並んでいました。
カウンターの前には十人ほど。床には並ぶ位置を示す線があり、みんな順番に前へ進んでいました。
そこへ一人の客が列の横から歩いてきて、そのままカウンターの前に立ちました。若い店員さんがすぐに声をかけます。
「申し訳ありません。あちらの最後尾からお願いできますか」
すると、その客は大きな声で返しました。
「すぐ注文するだけなんだから、いいだろ」
さらに、少しいら立った様子で言いました。
「臨機応変にやれよ」
店員さんは声を荒らげることなく、もう一度伝えました。
「恐れ入ります。順番にお願いしております」
これで二度目です。
それでも客は動かず、レジの上に千円札を置きました。紙が台に当たる短い音が、妙に耳に残っています。
私も、周りで並んでいた人たちも何も言えませんでした。列は止まり、みんなそのやり取りを見ていました。
店長が出てきて、先に会計を済ませた
困った様子の店員さんは、いったん奥へ行き、店長を呼んできました。
店長は客と少しやり取りをしたあと、その人の会計を先に済ませました。
なぜそう判断したのか、私には分かりません。
ただ、結果として、その客は最後尾に並び直すことなく注文を終えました。
やがて客は品物を受け取り、そのまま席のほうへ歩いていきました。
謝ることもなく、周囲から何か言われることもありませんでした。
列は再び動き始めましたが、私は少し引っかかっていました。
店員さんは二度とも、店の列に沿って並んでほしいと案内していました。
それなのに最後は、その案内とは違う形で会計が終わってしまったからです。
もちろん、店長にもその場を収めるための判断があったのかもしれません。
けれど、目の前で二度案内していた店員さんは、どんな気持ちだったのだろうと思いました。
私の番になって、伝えた一言
ようやく私の番が来ました。
カウンターの向こうで、先ほどの店員さんが少しうつむきながら伝票を渡してきました。
「お待たせしました」
私は迷った末、小さな声で言いました。
「大変でしたね」
店員さんは一瞬こちらを見てから、短く返しました。
「……ありがとうございます」
そのときまで私は、割り込まれたことで損をしたのは、順番を待っていた私たちだと思っていました。
でも、いちばん居心地の悪い思いをしたのは、決まりどおり二度も案内した店員さんだったのかもしれません。
それ以来、店で誰かがきちんとルールを説明したり、難しいお願いを断ったりしている場面を見ると、その対応が当然だと思って黙って通り過ぎるだけではなく、機会があれば一言お礼を伝えるようにしています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














