「日傘のことは書いてなかったもんね」運動会で順番に場所を譲る中、最前列に残り続けた一人に感じた違和感
みんなが自然に入れ替わっていた運動会
次男が年長だった年、幼稚園の運動会に参加しました。
園庭は狭いのですが、家族も入れることになっていて、朝から多くの人が場所を探していました。
私が持っていったのは、折りたたみの座布団だけです。そこにしゃがんで見れば、後ろの人の視界をなるべく遮らずにすむと思っていました。
園から配られた紙には、レジャーシートやテントについての規制があり、椅子は使用してよいと書かれていました。
日傘についての記載はありません。ただ、「なるべく全員が見られるよう配慮してください」という一文がありました。
当日、一番前の列には、椅子に座って日傘を差している方がいました。
最初は私も特に気にしていませんでした。ところが競技が進むうちに、周囲とは少し違うことに気づきました。
ほかの保護者は、自分の子どもの出番が終わると後ろへ下がっていきます。
すると次の競技に出る子どもの家族が前へ出る。誰かが決めたわけではありませんが、自然とそんな入れ替わりができていました。
「終わったので、どうぞ」
「ありがとうございます」
そんな短いやり取りも聞こえてきます。
私も次男の出番が終わると座布団を持って立ち上がり、後ろにいた人と場所を替わりました。
最後まで変わらなかった一番前の席
ところが、一番前で椅子に座っていた方は動きませんでした。
競技が変わってもそのままで、日傘も開いたままです。後ろにいた人たちは少しずつ横へずれ、傘を避けるようにして園庭をのぞいていました。
近くにいた人が、小さな声で言いました。
「あれって、だめじゃないんだよね」
「うん。椅子はいいって書いてあったし…」
「日傘のことは書いてなかったもんね」
私も気になっていましたが、声をかけることはできませんでした。先生たちは運動会の進行に追われていて、その方に注意する様子もありません。
明確に禁止されているわけではないだけに、周囲も言いづらかったのだと思います。
結局、その方は閉会まで一番前の席に座っていました。
次の年も持っていった同じ座布団
帰り道、私は使っていた座布団をたたみながら、少し不思議な気持ちになりました。
その日、多くの人がしていた場所の入れ替わりは、園から細かく指示されたものではありません。
それでも、自分の子どもの出番が終われば後ろへ下がり、次の家族に場所を譲っていました。
ルールに書かれていなくても、周りを見ながら自然に譲り合うことはできる。逆に、書かれていないからこそ、どこまで相手に求めていいのか迷うこともあります。
次の年の運動会にも、私は同じ座布団を持っていきました。
そして自分の子どもの出番が終わると、前年と同じように立ち上がり、後ろへ下がりました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














