「もっと早く相談すればよかったですね」20年続いた近所の住人との洗車問題。だが、僕が初めて伝えた本音
急ぎの朝、また車が止まっていた
妻を病院へ連れていくことになったのは、平日の朝でした。
車の鍵を持って外へ出ると、家の前の道に泡だらけの車が一台止まっています。
近くのご主人が、ホースを手に洗車をしていました。
ご主人の家には駐車場がなく、月に2度ほど、洗車をするときだけうちの前に車を寄せてきます。
ただ、その場所に車を止められると、うちの車庫から車を出すことができません。
車を使いたいときは、そのたびに声をかけて移動してもらっていました。
頼めばすぐに動かしてくれるので、僕も強く言うことができないまま、そんなやり取りが20年ほど続いていたのです。
けれど、その日は妻を病院へ連れていかなければならず、急いでいました。
僕が車庫の前に出ると、ご主人はこちらに気づき、ホースの水を止めました。
「あ、車出しますか?ちょっと待ってください」
いつものように運転席へ向かおうとするご主人を見て、僕は思い切って声をかけました。
「すみません。今日はそれだけじゃなくて、少しお話ししてもいいですか」
ご主人が足を止めました。
「ここで洗車されると、うちの車が出せないんです。今まではその都度お願いしてきましたけど、今日みたいに急いでいるときは、やっぱり困ってしまって」
ご主人は少し驚いた顔をして、自分の車と、うちの車庫を見比べました。
「…そうですよね。すみません」
それ以上言い返すことはなく、すぐに車を移してくれました。
妻を乗せて病院へ向かいながら、もっと早くきちんと伝えておけばよかったのかもしれない、と僕は考えていました。
20年続いたことを、初めて相談した
数日後、町内の清掃があったとき、僕は町内会長さんにこの話をしました。
「責めたいわけじゃないんです。ただ、うちの前じゃなくて、ほかに洗える場所があればいいんですけど」
会長さんは話を聞いたあと、少し考えてから言いました。
「集会所の駐車場が使えるか、一度確認してみましょうか」
その場ですぐに決まったわけではありませんでしたが、後日、集会所の駐車場を使えることになったと聞きました。
その週末、僕が庭木に水をやっていると、ご主人がうちの前まで歩いてきました。
「この前はすみませんでした。ずっと邪魔になっていたんですね」
「僕も、もっと早くちゃんと言えばよかったです」
ご主人は小さく頭を下げました。
「これからは集会所のほうで洗います。もうここには止めません」
「ありがとうございます」
それから、ご主人がうちの車庫の前で洗車をすることはなくなりました。
次の月、集会所の駐車場の近くを通ると、ご主人がそこで車を洗っていました。
後日、道ですれ違ったときには、ご主人のほうから声をかけてきました。
「あそこ、広いから洗いやすいんですよ。もっと早く相談すればよかったですね」
「本当ですね」
僕も笑って返しました。
20年も続いていたことだけに、言い出すまでは少し構えていました。でも実際には、大きな言い争いになることもありませんでした。
長く続いていることほど、「今さら言いにくい」と感じてしまうものです。それでも、困っていることは我慢し続けるのではなく、落ち着いて伝えることが大切なのだと感じた出来事でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














