「いっそ、引っ越そうか」夜中2時まで響くテレビ音に耐えた1か月。管理会社と訪ねた僕に住人が返した言葉
引っ越しまで考えた夜
夜11時を過ぎても、隣の部屋からテレビの音が聞こえてきました。ときどき話し声まで壁越しに響き、静かになるのは決まって夜中の2時ごろです。
布団に入ってもなかなか眠れず、何度も寝返りを打つ。そんな夜が週に4度ほど続いていました。
朝、僕の顔を見た妻が心配そうに聞きました。
「昨日も眠れなかったの?」
「うん。また2時までだった」
管理会社にも一度相談し、隣の部屋へ注意を伝えてもらいました。
その晩は静かでしたが、3日ほどすると再び元どおりに。直接言いに行くことも考えましたが、この先も隣で暮らす相手です。
こじれるのが怖く、踏み切れませんでした。
「いっそ、引っ越そうか」
僕がこぼすと、妻は少し考えてから言いました。
「その前に、いつ音がしてるのか記録してみない?」
そして、台所の引き出しから使っていないノートを一冊出してきました。
1か月分の記録を見せると
それから僕は、音が気になった日と、静かになった時刻をノートに書くようにしました。
1か月後、記録は16日分になっていました。
僕はそのノートを持って、もう一度管理会社へ相談に行きました。
対応した40代くらいの男性担当者は、日付と時刻を一つずつ確認すると、顔を上げました。
「ここまで記録があれば、具体的にお話しできます。一緒に行きましょう」
夕方、担当者と隣の部屋を訪ねました。出てきたのは、作業着姿の50代くらいの男性でした。
担当者はノートの記録を示しながら、落ち着いた声で伝えました。
「夜中の2時ごろまで音が続いた日が、この1か月で16日あります。夜11時以降は、音量を下げるか、ヘッドホンを使っていただけませんか」
男性はページを見つめたあと、担当者の後ろにいた僕に気づきました。
「……16日もですか。夜勤から帰ると、つい音を大きくしてしまって。すみませんでした」
それから、夜中のテレビ音は聞こえなくなりました。
数日後、ごみ出しの帰りに廊下で男性と会いました。手にはヘッドホンの箱を抱えていました。
「前は、すみませんでした。これからは、これで見ます」
「ありがとうございます。助かります」
部屋へ戻ると、妻が引っ越し先の間取り図を丸めて、ごみ箱へ入れていました。
その夜、僕は久しぶりに朝まで一度も目を覚ましませんでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














