「でも、父は叔父さんを信じて貸したのよ」15年前の100万円をめぐり、母が法事の席で明らかにした記録
借用書のない100万円と、叔父の言い分
15年前、父は弟である叔父に100万円を貸しました。
当時、わが家の生活にも余裕があったわけではありません。
それでも父は、返済は余裕ができてから少しずつでいいと伝え、借用書も作りませんでした。
兄弟だからこそ、そこまで信用していたのだと思います。
父が亡くなったあと、私が返済について叔父に尋ねると、「少しずつ返すつもりだ」と言われました。
実際に月1万円ずつの返済が始まったのですが、それも6回で止まってしまったのです。
心配になって電話をしても、叔父は「今は余裕がない」と繰り返すばかり。
それから半年後、私はもう一度電話をかけました。
「叔父さん、毎月じゃなくてもいいの。返せるときに、少しずつでも返してくれない?」
「だから、今は無理だって言ってるだろ」
「でも、父は叔父さんを信じて貸したのよ」
すると、叔父の声が急に大きくなりました。
「証文もないのに、返せと言うのか」
「えっ…?」
「兄貴はもういないんだぞ。借りた証拠なんて、どこにあるんだよ!」
あまりの言い方に、私は言葉を失いました。
叔父が以前、返済するつもりだと言っていたことも、6回お金を返してくれたことも、なかったかのような口ぶりでした。
それ以上話すことが怖くなり、私は電話を切りました。
その晩、母に電話での出来事を話すと、母は黙って聞いたあと、仏間のほうに目を向けました。
父の法事で、母が開いた古いノート
その後、父の法事があり、親族で食事をすることになりました。
実家の座敷で、私は母と叔父の間に座っていました。叔父は私とは目を合わせず、ほかの親族と話しています。
やがてお酒が回ったころ、叔父が笑いながら言いました。
「兄貴の金のことで、この子にしつこく電話されてね。証文もないのに、困ったもんだ」
親族の前でそんなことを言われ、私は返す言葉が見つかりませんでした。
そのとき、母がそばに置いていたふくさから、古いノートを取り出しました。
「証文はないけど、これを見てもらえますか」
母はノートを開き、叔父のほうへ向けました。
そこには父のくせのある字で、15年前に叔父へ100万円を貸した日付と金額が記されていました。
さらに、その横には「弟、必ず返すと言う、信じて待とう」と書かれていたのです。
借用書は作らなくても、父は自分のノートに記録を残していました。
母は続けて、その下に並んだ日付を指さしました。
「こっちは、あなたが返してくれた6回分。届くたびに私が書いておいたんです」
叔父は身を乗り出し、ノートをじっと見つめました。
「最初はちゃんと返してくれましたよね。それなのに、借りた証拠がないなんて…」
母の声は静かでしたが、叔父は何も言い返しませんでした。
向かいに座っていたいとこも、ノートを見て口を開きました。
「6回も返してたんなら、借りたのは確かだよな」
親族の視線が叔父に集まりました。隣のおばも箸を置き、叔父の返事を待っています。
叔父は何か言いかけましたが、結局、口を閉じました。
母はノートを閉じずに言いました。
「今すぐ全部返してとは言いません。前と同じ、月に1万円ずつでいいんです。みんなの前で、もう一度約束してもらえませんか」
しばらく黙っていた叔父が、小さな声で答えました。
「……来月から、また送る」
母はその返事を聞くと、父の記録の下に、その日の日付と叔父の約束を書き加えました。
叔父はそれ以上何も言わず、そのあと、お酒にも手を伸ばしませんでした。
私は父の字が残るノートを見ながら、胸の奥が少しだけ軽くなるのを感じました。
返済が終わったわけではありません。それでも、なかったことにされかけた父と叔父の約束を、母がきちんと残してくれていたことが、何よりうれしかったのです。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














