「これ、誰が作ったんですか?」前の資料を酷評した新人の私。だが、作成者欄を見て固まった理由
2冊を読み比べた午後
私が入社したばかりの春、昼の事務所でのことです。
自分の机には、部署で新しく使う手順の資料と、前の年まで使われていた資料が並んでいました。
右隣の席では、30代の先輩が伝票を整理していました。
新しい資料は、1つの手順が見開きにまとまっていて、図を追えば流れが分かる作りでした。
一方、前の資料は30ページあり、同じような説明が何度か出てくるため、読み進めているうちにどこを確認していたのか分からなくなることがありました。
2冊を読み比べた私は、新しい資料の分かりやすさに感心し、何気なく先輩に声をかけました。
「新しい資料、すごく読みやすいですね。手順も追いやすいです」
先輩は伝票から顔を上げ、少し笑いました。
「そう?それならよかった」
その反応に安心した私は、前の資料を手に取りました。
「前の資料、30ページもあって読みにくかったです」
「同じような説明が何度か出てきて、途中でどこを見ればいいのか迷っちゃって。これ、誰が作ったんですか?」
すると先輩は手を止め、なぜか何も言わずに笑いました。
その表情が気になって、私は手もとの資料に目を落としました。
表紙にあった先輩の名前
表紙の右下には、小さく作成者の名前が記されていました。
そこにあったのは、たった今、隣で話を聞いていた先輩の名前でした。
「…えっ」
資料を持ったまま、私は固まりました。
先輩は私の机から新しい資料を手に取り、ぱらぱらとページをめくりました。
「前のも、けっこう頑張って作ったんだけどね」
「すみません……!まさか先輩が作ったとは知らなくて」
私は耳まで熱くなり、その場で何度も頭を下げました。本人のすぐ隣で、作った人を探しながら感想を言っていたのです。
「いいよ、いいよ。新しいほうが分かりやすいのは本当だから」
「でも、本人の前であんなことを…」
先輩は新しい資料を閉じると、表紙を軽く指でたたきました。
「これは俺の後輩が作ったんだよ。前のは読みにくいって言って、作り直してくれたんだ」
通路の向こうの席では、課長が湯のみを持ったまま肩をふるわせていました。
それ以来、私は資料について感想を言う前に、まず表紙の作成者を見るようにしています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














