「座ったら、たぶんもう立てない」一日中レジに立った同期。退勤前の一言で恥ずかしくなったワケ
朝から何度も繰り返した、同じひと言
私が以前、働いていたカフェでの話です。
その日は、同じ月にアルバイトを始めた同期と、朝から一緒のシフトに入っていました。
同期の担当は、ほぼ一日レジでした。
持ち帰りのお客さまには名前をうかがい、できあがった商品を名前で呼んで渡すのが店の決まりです。
昼どきには列が入り口近くまで伸び、同期は休む間もなく注文を受けていました。
「いらっしゃいませ。お名前をお願いします」
何度その言葉を口にしたのか分かりません。
慣れない手つきでレジを打ちながらも、同期は最後まで明るく接客していました。
夕方、ようやく混雑が落ち着き、遅番のスタッフと交代しました。
私たちは、同じく上がりだった男女のスタッフ2人と一緒に、奥の従業員用の小さな部屋へ戻りました。
同期はエプロンをつけたまま立ちつくし、ぼんやりしています。
「座ったら?」
私が声をかけると、同期は力なく首を振りました。
「座ったら、たぶんもう立てない」
かすれた声を聞いて、今日はもう笑う元気も残っていないだろうと思いました。
店長を見た瞬間、接客モードに逆戻り
そこへ店長が入ってきました。
立ったままの同期を見ると、少し心配そうに声をかけます。
「お疲れさま。今日は大変だったね」
すると次の瞬間、同期の背すじがぴんと伸びました。
顔には、さっきまでレジで見せていた笑顔が戻ります。
「いらっしゃいませ。お名前をお願いします」
店長が「え?」と目を丸くしました。
その顔を見て同期も慌てたのでしょう。なぜか今度は、自分の名字と名前をはっきり名乗りました。
「…あ、違う。何してるんだろ、私」
部屋が静まり返ったのは、ほんの一瞬でした。
私とスタッフ2人が吹き出し、店長まで肩を揺らして笑い始めました。
「うん、名前は知ってるよ」
そこでようやく同期も、自分が何をしていたのか分かったようです。
耳まで真っ赤にしてしゃがみ込み、頭を抱えながら私を見上げました。
「いま私、レジの声で何て言いました?」
「店長に『いらっしゃいませ』って言って、名前を聞いて、そのあと自分で名乗ってた」
「うそでしょ…店長をお客さまにしちゃった」
同期も耐えきれずに笑いだし、部屋じゅうがまた笑いに包まれました。
朝から張りつめていた疲れが、その瞬間だけ少し軽くなった気がしました。
帰りぎわ、店長は同期の背中に声をかけました。
「気をつけて帰ってね。……えっと、お名前は?」
同期が「もうやめてください!」と笑い、私たちは最後にもう一度吹き出したのでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














