「親の顔が見てみたい」防音マットを2枚重ねても苦情を続ける1階の住人。不動産屋で明らかになった別の問題
防音マットを2枚重ねても届く苦情
息子と2人でアパートの2階に引っ越し、暮らしにも慣れてきたころのことです。
ある日の昼、1階にある集合ポストを確認すると、私たちの部屋宛てに白い封筒が入っていました。
差出人の名前はありません。
ただ、布団の干し方や床の音についての苦情が書かれており、最後には真下の部屋の住人だと記されていました。
50代の私は、特に変わったことをしているつもりはありませんでした。
それでも迷惑をかけていたのなら申し訳ないと思い、おわびの手紙を相手のポストに入れました。
ところが、後日届いた2通目には、こんなことが書かれていたのです。
「下の階まで振動が響く、マットを2重にしなさい」
そこまで響いているのかと驚きましたが、息子もいるので、できる対策はしようと思いました。
すぐに床へ防音マットを敷き、週末にはもう1枚買い足して重ねました。
「お母さん、これで大丈夫かな?」
「そうだといいね。でも、走らないように気をつけようね。お友達が来たときもね」
息子はうなずき、厚くなったマットの上をそっと歩いていました。
それでも3通目の手紙が届きました。そこには「親の顔が見てみたい」とまで書かれていたのです。
手紙を読んだ息子は、それから家の中でもつま先立ちで歩くようになりました。
そんな姿を見るたびに、これ以上どうすればいいのだろうと悩みました。
不動産屋で知った、ほかの住人からの苦情
しばらくすると、今度は毎晩、日付が変わるころに下の階から大きな音が響くようになりました。
ドンドン、ドンドンと、壁や天井を何度もたたいているような音です。
何日も続いたため、私は夕方、不動産屋へ相談に行きました。
すると、カウンターには同じアパートに住む60代の女性と30代の男性が座っていました。
私が夜中の音について話すと、女性も困った顔で口を開きました。
「やっぱり1階からなのね。うちの寝室まで響いてくるのよ」
男性もうなずきました。
「僕も何度か電話してるんですけど、全然収まらなくて…」
40代くらいの男性担当者は、手元の記録を確認してから言いました。
「今月に入って、夜中の音について何件もご連絡をいただいています。1階以外のお部屋からは、すべて苦情が来ているんです」
驚いた私は、思わず尋ねました。
「あの……うちの足音についても、苦情は来ていますか?」
「いえ。こちらには、2階のお部屋の音についての苦情は届いていませんよ」
直接届いた手紙に悩み続けていただけに、その返事には驚きました。
担当者はその場で1階の住人に電話をかけました。
すると、受話器の向こうから「上の階がうるさいからだ」と言い返す声が漏れてきました。
担当者は落ち着いた声で話を続けました。
「上の階の音が気になるというお話は分かりました。ただ、夜中に大きな音を出されると、ほかのお部屋にも響いてしまうんです」
そして、少し間を置いて伝えました。
「これ以上続くようなら、次の更新はお受けしないと大家さんもおっしゃっています」
それまで聞こえていた相手の声が、ぴたりと止まりました。
隣にいた女性は私の手をそっとたたき、男性も小さくうなずいてくれました。
自分たちだけが悩んでいたわけではないと分かり、少し気持ちが軽くなりました。
それからしばらくして、1階の部屋は空になりました。
後日、様子を見に来た担当者が、集合ポストの前で小声で教えてくれました。
「下の階に気を遣わなくていい一戸建てを、ご案内したんですよ」
その夜、私は重ねていた防音マットを1枚外しました。
すると息子は、久しぶりにかかとを床につけて、ゆっくり部屋の端まで歩いてみせました。
ようやく、家の中で必要以上におびえずに過ごせるようになったのだと思うと、ほっとしました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














