「ちょっと開けてちょうだい!」引っ越しのあいさつでお菓子を渡した翌朝。隣の奥さんからのお返しに、思わず笑ってしまった理由
引っ越した翌朝、玄関から聞こえた大きな音
15年ほど前、今の家に引っ越してきたときの話です。
引っ越し当日の夕方、私はお菓子の箱を持って、隣のお宅へあいさつに行きました。
出てきたのは、エプロン姿の奥さん。私たちと同じように、少し前に引っ越してきたばかりだそうです。
「あら、お隣さん!これからよろしくね!」
奥さんはにこにこしながら迎えてくれました。
ほんの数分の立ち話でしたが、感じのいい人で安心したのを覚えています。
ところが、その翌朝のことです。
私はまだパジャマ姿で、山積みの段ボールから食器を探していました。
すると突然、玄関から大きな音が響いてきたのです。
ドンドン、ドンドン!
誰かが扉をたたいています。インターホンは鳴らず、何度も扉をたたく音だけが続きました。
「えっ、誰…?」
まだ着替えてもいなかった私は、とっさに居留守を使おうとしました。
廊下の壁に背中をつけ、じっとしていると、今度は声が聞こえてきました。
「すみませーん!お隣ですー!」
昨日あいさつした奥さんの声でした。
知っている人だと分かって少し安心したものの、今度は別の心配が浮かんできました。
もしかして、昨日のお菓子に何か問題があったのでしょうか。あいさつの仕方が失礼だったのでしょうか。
考えているあいだにも、奥さんの声が響きます。
「いるんでしょー?ちょっと開けてちょうだい!」
もう隠れているわけにもいきません。
笑顔で渡された紙袋の中身は
私は覚悟を決め、パジャマ姿のまま玄関の扉を半分ほど開けました。
すると、そこには小さな紙袋を持った奥さんが立っていました。昨日と同じエプロン姿で、満面の笑みを浮かべています。
「ああ、よかった!やっぱりいたのね!」
「あ、すみません。まだパジャマで…」
「いいのよ、そんなの!昨日お菓子もらったから、お返しね!」
そう言うと、奥さんは私の胸もとに紙袋を差し出しました。
「えっ、わざわざありがとうございます」
「今度、お茶でも飲みましょうね!」
奥さんは明るく手を振り、そのまま自分の家へ戻っていきました。
扉を閉めた私は、紙袋を抱えたまま玄関に座り込みました。
「なんだ、お返しか…。びっくりした」
あれほど緊張していたのに、奥さんはただお礼を届けに来てくれただけだったのです。
ようやく落ち着いた私は、台所で紙袋を開けてみました。
お菓子のお返しだから、きっと中身もお菓子だろうと思っていました。
ところが、出てきたのは消臭スプレーが1本。
「えっ、消臭スプレー!?」
思いがけない品物に、私は段ボールの山を前にして吹き出してしまいました。
なぜ消臭スプレーだったのか、その理由は今も聞けていません。
ただ、当時は新しい家のにおいが気になっていたので、実際に使ってみると驚くほどよく効きました。
その後、奥さんにお茶に呼ばれたことをきっかけに、私たちは親しくなりました。
あれから15年。今では、いちばん仲のいいご近所さんです。
つい先日も、朝から玄関をたたく音がして、聞き慣れた声が響きました。
「いるのは分かってんのよー!煮物、作りすぎちゃった!」
昔と変わらない奥さんの声に、思わず笑ってしまいました。
15年前はあんなに怖がっていたのに、今ではパジャマ姿でも平気で扉を開けています。
あの朝の消臭スプレーを思い出すたび、今でも少しおかしくなるのです。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














