「なんで最後になっちゃったの?」運動会で息子を叱る母親。だが、男の子が明かした事情に言葉を失った
走りの途中で振り返った男の子
幼稚園の運動会の日、私はわが子の出番を待ちながら、かけっこのゴールから少し離れた場所で年長の子どもたちを見ていました。
空には雲ひとつありませんでした。
私のすぐ前には、息子の走る姿を楽しみにしている様子の母親がいました。
スタートの合図とともに、その男の子が先頭に飛び出します。
「ほら、先頭よ!見て見て!」
母親はうれしそうに声を上げ、後ろにいた家族のほうを振り返って手を振りました。
ちょうどそのとき、男の子のすぐ後ろを走っていた子が転んだのです。
男の子は振り返って足を止めました。
転んだ子が起き上がるのを待ち、それからまた走り始めました。
その間にほかの子たちは先へ進んでいました。
母親はその場面を見ていません。
コースに目を戻すと、息子が次々に抜かれているのに気づきました。
「えっ、どうしたの?さっきまで先頭だったのに」
結局、男の子は最後にゴールしました。
母親はゴールのそばへ駆け寄ると、腰に手を当て、息子に向かって声を上げました。
「なんで最後になっちゃったの?もっとちゃんと走れたでしょ!」
男の子はうつむいたまま、何も言いません。
「みんな見てたのよ。最後なんて、みっともないじゃない!」
その声に、近くの保護者たちも振り向きました。男の子は今にも泣きそうです。私は転んだ子を待っていた姿を見ていたので、胸が痛くなりました。
拍手の中で立ちつくした母親
やがて男の子は、唇をかんで涙をこらえながら、ぽつりと言いました。
「ころんだ子をまってたんだもん」
母親は言葉に詰まりました。
「え……待ってたの?」
そこへ担任の先生が小走りでやってきました。エプロン姿の先生は男の子の前にしゃがみ、頭をなでながら声をかけました。
「先生も見てたよ。お友だちが起きるまで待っててくれたんだよね。やさしかったね」
近くにいた保護者から拍手が起こりました。転んだ子の母親もやってきて、男の子に頭を下げました。
「待っててくれたんだね。ありがとう」
そばにいた父親も「やさしいね」と声をかけました。
それまで勢いよく叱っていた母親は、顔を赤くして立ちつくしていました。何か言おうとして口を開きかけても、すぐに閉じてしまいます。
少しして、母親は息子の頭にそっと手を置き、ぎこちなくなでました。男の子は涙の残る顔で、ほんの少し笑いました。
その様子を見届けて、先生は立ち上がりました。ゴールのそばには、まだ拍手の音が残っていました。
速く走ることだけが、あの子にとって大切だったわけではない。私は、立ち止まった男の子の姿が心に残りました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














