「墓場まで持っていくから」二度も詐欺に遭った姉が私にだけ打ち明けた秘密→何も知らない夫の前で見せた笑顔に背筋が凍った
段ボール箱に囲まれた部屋で
姉の家族が家を売り、小さな部屋へ引っ越したのは、少し前のことです。
引っ越しを手伝いに行くと、居間にはまだ段ボール箱が積まれていました。
姉は座卓をはさんで私の向かいに座り、お茶を注いでくれました。
「散らかっててごめんね。ここしか座るところがなくて」
「気にしないで。お義兄さんは?」
「奥で荷物を片づけてるよ」
奥の部屋からは、義兄が段ボール箱を開ける音が聞こえてきます。
姉が家を手放すことになった背景には、詐欺被害がありました。
インターネットで知り合った相手にだまされ、大きなお金を失ってしまったのです。
そのとき姉は、義兄にすべてを打ち明けました。
二人ともひどく落ち込み、義兄はその被害が原因で家を売ることになったと思っています。
けれど、姉はもう一度だまされていました。
そして、その事実を義兄は知りません。
「お金を取り戻せる」と言われた姉
以前、姉の家に立ち寄ったときのことです。
居間で姉が携帯電話を耳に当て、背中を丸めながら話していました。
表情は険しく、何度も相手の言葉にうなずいています。
「はい……分かりました。すぐに用意します」
「お姉ちゃん、どうしたの?」
私が声をかけると、姉は驚いたように振り向き、慌てて電話を切りました。
そのときは、何かの手続きだろうと思い、それ以上は聞きませんでした。
ところが、その後も姉の様子が気になり、事情を尋ねると、姉は泣きながら話し始めたのです。
電話の相手は、以前だまし取られたお金を取り戻せると言ってきたそうです。
ただし、そのためには先に手続きの費用を払う必要がある、と。
「どうしても、取り戻したかったの……」
姉はそう言って、うつむきました。
失ったお金を取り戻したい一心で、また支払ってしまったのです。しかし、結局お金は戻ってきませんでした。
私は驚きましたが、姉を責めることはできませんでした。
すぐに消費生活センターへ相談すると、相談員の方は事情を聞き、これ以上お金を払わないことや、知らない番号からの電話に出ないことを丁寧に教えてくれました。
姉は携帯電話の番号を変更し、それからは怪しい電話もかかってこなくなりました。
少し落ち着いたころ、私は姉に言いました。
「お義兄さんにも、話したほうがいいよ」
「……ううん。あの人には言わない」
「でも、ずっと黙ってるつもり?」
姉はしばらく黙ったあと、私の目をまっすぐに見ました。
「墓場まで持っていくから」
その声は静かでしたが、何を言っても考えを変えないように感じました。
夫の声に、姉が見せたいつもの笑顔
引っ越し先の部屋でお茶を飲みながら、私はそのときの姉の言葉を思い出していました。
「新しい部屋も、悪くないでしょ」
座卓の向こうで、姉はいつものように笑っています。
けれど、私にはその口元が少しこわばっているように見えました。
そのとき、奥の部屋から義兄の穏やかな声が聞こえてきました。
「この箱、台所でいいのかな」
「うん、お願い」
姉は何事もなかったように返事をすると、私と目を合わせ、ほんの少しだけ首を横に振りました。
私は何も言えず、湯のみを口に運びました。
二度目の詐欺被害を知っているのは、家族の中で姉と私だけです。
姉が義兄に話さない本当の理由を、私はまだ聞けていません。
ただ、あの日の涙と「墓場まで持っていく」という言葉は、今も忘れられません。
何も知らずに荷物を片づける義兄の声を聞きながら、私は姉の笑顔をまともに見ることができませんでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














