「小さい子がいると大変なんですよ」運動会でテントを張った家族。だが、先生が静かに伝えた場所の使い道
日傘も禁止の運動会で見つけたテント
わが子が通う小学校の運動会では、観覧場所が狭いため、日傘やレジャーシートの使用が禁止されていました。
その日は朝から雲ひとつない晴天。校庭には大勢の保護者が集まり、立っているだけで汗がにじみます。私は校庭の隅に近い場所で、わが子の出番を待っていました。
すると、その隅にテントが張られているのが目に入りました。
テントの下にはベビーカーと荷物が置かれ、母親は小さな子どもを抱いて座っています。父親はテントの脇で荷物を出し入れしていました。
「えっ、テント?」
「日傘も禁止なのに……」
近くの保護者から、驚いた声が上がりました。母親は子どもに飲み物を飲ませています。暑い中、小さな子を休ませたい気持ちは分かりますが、あの場所を使っていいのだろうかと気になりました。
やがて、少し年上に見える保護者の女性が、テントに近づいて声をかけました。
「すみません。テントも使えないんじゃないですか?」
母親は女性を見上げ、ため息をつきました。
「端っこに張ってるんだから、いいじゃないですか」
女性が戸惑った様子で立っていると、母親は続けました。
「小さい子がいると大変なんですよ。見てわかりません?」
女性はそれ以上何も言わず、引き下がりました。私も気になりながら、競技に目を戻しました。
先生が伝えた校庭の隅の使い道
午後の競技が始まってしばらくすると、ジャージ姿の男性の先生がテントの前に来ました。
「すみません。ここ、午後に出場する学年の子どもたちが並ぶ場所なんです」
「えっ、そうなんですか?」
母親が聞き返すと、先生はテントの立っている地面を手で示しました。
「入場を待つ場所になります。子どもたちが並べるよう、テントを片付けていただけますか」
母親は何か言おうと口を開きましたが、そのまま黙ってしまいました。
家族が休んでいたのは、ただ空いているだけの隅ではなかったのです。
「端っこならいいって言ってたのにね」
後ろのほうから、小さな声が聞こえました。
父親はすぐにテントのポールを抜き始め、母親は荷物をベビーカーにしまっていきます。家族はテントをたたみ、ベビーカーを押してその場所を離れました。
競技が続く中、先生が空いた場所に向かって声をかけました。
「こちらに並んでください」
子どもたちが次々と集まり、そこに列ができました。その中に、わが子の姿もありました。
「行ってきます!」
こちらに気づいたわが子が手を振り、入場門へ向かっていきます。私は手を振り返しながら、さっきまでテントがあった場所を見ました。
校庭の隅にも、空けておかなければならない理由があったのだと分かった出来事でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














