「母さんの留守に、作り話はやめて」祖母の羽織は自分がもらうと言い張る姉。妹の問い返しで顔が引きつった
母の留守に開けた衣装ケース
姉は、祖母の紺の羽織を母にもらう約束をしたと言いました
実家の2階の洋間で、姉と2人で衣装ケースを片付けていました。
母が小さな部屋へ移ることになり、留守のあいだに荷物を整理しておいてと頼まれたのです。母は町内の日帰り旅行に出かけていました。
ケースのふたを開けるなり、私より背の高い姉が、一番上にあった紺の羽織をさっと取り上げました。
祖母が若いころに着ていた上等な羽織で、最近仕立て直されたばかりの品でした。
「この羽織、母さんが私にくれるって。」
「私の寸法にぴったり直したの。」
姉は羽織をたたんだまま、胸に抱えこみました。
姉は、私にはお下がりで十分だと言い放ちました
羽織の話は、先週、母から電話で聞いていました。
母からは私が受け取るように言われたと説明しようとすると、姉は最後まで聞かずにあごを上げました。
「お下がりで十分、邪魔しないで。」
子どものころから、新しい服もかばんも先に選ぶのは姉でした。
私に回ってくるのは、いつも姉のお下がりです。
電話の話をしても、作り話だと言われてしまいました
母からの電話のことを口にしたとたん、姉の目がつり上がりました。
「母さんの留守に、作り話はやめて。」
旅行中の母にはすぐに連絡がつかず、その場で確かめることはできません。
姉は、このまま羽織を家へ持って帰るつもりです。昔から、姉に口で勝てたことは一度もありませんでした。
私は羽織から目を離し、床に視線を落としました。
姉に口で勝てない妹
私は姉の胸の羽織を見つめ、ひとつだけ問い返しました
それでも、祖母の羽織を渡すわけにはいきません。私は姉の胸の羽織を見つめ、ひとつだけ聞きました。
「袖を通しても、ぴったりでしょう?」
姉は、何を今さらという顔で、たたんだ羽織に手をかけました。
仕立て直しの店で寸法を測ってもらったのは私。姉の袖から手首が出ました
姉が羽織を広げて腕を通すと、紺の袖口は、手首の上、こぶし一つ分のところで止まりました。
袖の先から、白いブラウスの袖口と手首がすっかりのぞいています。
先月、母に付き添って仕立て直しの店へ行き、寸法を測ってもらったのは私でした。
母は店の人にも、私に譲るための仕立て直しだと説明していました。
先週の電話は、仕上がったから片付けのときに持っていってね、という知らせだったのです。
けれど、口で言っても、また作り話にされるだけ。だから、羽織に答えてもらうことにしました。
「羽織なんて、多少短くても着られる!」
姉は自分の袖口を見つめたまま、声をとがらせました。
羽織は、ぴったり合う私が持ち帰ることになりました
私は姉から羽織を受け取り、袖を通しました。紺の袖口は、私の手首でぴたりと止まります。
「私の寸法に、ぴったりです。」
私は、母と一緒に仕立て直しの店へ行ったことや、母が私に譲ると決めていたことを改めて説明しました。母が帰ってくれば、どちらの話が本当なのかすぐに確かめられます。
姉は腕を下ろし、口の端を引きつらせて、窓の方へ顔をそむけました。母さんからは何も聞いていない、留守なら分からないと思った。姉の口から出たのは、それだけでした。
私は羽織をいったん畳み、母の帰宅を待つことにしました。戻ってきた母に確認すると、やはり私に譲るために仕立て直した羽織だと分かりました。姉も母の前では言い訳できず、羽織は約束どおり私が持ち帰りました。
お下がりで十分と言われた私の腕に、祖母の羽織はあつらえたように収まっていました。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














