「冷蔵庫のメモ、見てないんですか」来客の時間変更を私にだけ伝えず、作り話で私に謝らせる後輩。所長の前で退散
20分待たせてしまった来客
後輩は、所長の前で、私に伝えたと言いました
「私、ちゃんと伝えました。」
取引先を見送り、湯のみを下げようと給湯コーナーに来たときのことです。後輩が、所長に向かってそう言いました。
10時のはずだった取引先の来社が、9時に早まっていたのです。
私は今朝、事務所の鍵を開けてお茶をいれ、9時の銀行窓口へ向かいました。
ところが、外出先で後輩から『先方がお見えです』と電話が入り、急いで戻ることに。事務所に着くまで20分かかりました。
その間、所長が取引先を応接室に案内していましたが、打ち合わせの詳しい説明は担当の私が行う予定だったため、先方を待たせてしまったのです。
変更の電話があったのは、昨夜、私が帰ったあとでした。
電話を受けた後輩のそばには所長もいて、『先輩には私から』と言う後輩に連絡を任せていたそうです。
後輩は以前から、この取引先の仕事に関わりたいと希望していました。しかし、私に連絡が届いていなかったとはいえ、先方を待たせたことは事実です。
ゆうべ冷蔵庫の扉に磁石でメモを貼った、と言いました
後輩は身を乗り出し、『時間の変更はメモに。夜遅くて電話は遠慮しました。先輩、朝いちばんにここでお茶をいれるでしょう』と続けます。
「ゆうべ、冷蔵庫の扉に貼りました。」
「いつもの磁石で、まん中にぴたっと。」
所長は腕を組んだまま、『まず、先方への謝りだ』と私を見ました。
先方には戻った際にお詫びしましたが、所長は改めて私から連絡するよう求めているようでした。
先方に謝ってと言われ、私はうつむきました
後輩が、私に向き直りました。
「冷蔵庫のメモ、見てないんですか。」
『もう、ないですよね。先輩、お茶のときに捨てたんじゃないですか』
『先輩が、先方に謝ってください』。
「担当は、私が代わりましょうか。」
昨夜、最後に事務所を出たのは後輩で、今朝、最初に入ったのは私でした。冷蔵庫の扉にメモがあったかどうか、ほかに確認した人はいません。
所長は普段から後輩をかわいがっていました。私が何を言っても、責任逃れをしているように聞こえるかもしれません。
事情を説明できないまま、私は所長の前で頭を下げました。
視線の先には、灰色の床ばかりが見えました。
「先輩が、先方に謝って」と言われて
私はロッカーの磁石を外し、貼ってみようと言いました
それでも、担当まで渡すわけにはいきません。
銀行の書類袋をしまおうと、自分のロッカーを開けたときです。扉の内側に付けていた、丸い黄色の磁石が目に入りました。
そこで、あることを思い出したのです。
私は磁石を一つ外し、冷蔵庫へ向き直りました。
「この磁石で、貼ってみましょう。」
後輩は『どうぞ』と言い、私に場所を譲って給湯コーナーの入り口側へ回ります。
ガラスの扉に磁石はつかず、私の手のひらへ落ちました
黒い扉のまん中に磁石を当てて、手を離しました。
磁石は止まらずにすべり、私の手のひらに落ちました。
実は昨日の夕方、後輩が外出している間に、事務所の冷蔵庫が新しい物に交換されていたのです。
新しい冷蔵庫は、扉の表面が一枚のガラスになっており、以前のように磁石を付けることができません。
交換に立ち会った私は、古い冷蔵庫に付いていた磁石を外し、自分のロッカーに移しておきました。
一方、後輩は外出から戻ったあと、給湯コーナーに立ち寄らずに退社していたため、扉が変わったことに気づいていなかったようです。
昨夜、本当にメモを貼ろうとしていれば、磁石がつかないことに気づいたはずです。
所長の視線も、私の手のひらに落ちた磁石へ向けられました。
後輩が、磁石から目を離せないまま叫びました。
「テープで貼ったんです!」
後輩は伝えなかったと認め、所長に背を向けました
「テープの話は、今が初めてです。」
所長が、黒い扉に手のひらを当てました。
先ほどまで後輩は、いつもの磁石で扉のまん中に貼ったとはっきり説明していました。それなのに、今度はテープで貼ったと言い出したのです。
所長が昨夜の状況を改めて確認すると、後輩の説明は次第に曖昧になっていきました。
そして、しばらく黙り込んだあと、後輩は小さく『先輩にだけ、言いませんでした』と認めました。
『担当の話は、取り下げます』。
取引先の担当になりたかった後輩は、私が時間変更を知らずに失敗すれば、自分に仕事が回ってくると考えていたようです。
所長は厳しい表情になり、昨夜の連絡を後輩任せにして、確認しなかった自分にも落ち度があったと認めました。
先方へのお詫びは所長自身が行い、担当も引き続き私が務めることになりました。
11時に郵便局へ行く際に着る予定だったコートを、後輩は入口脇のコート掛けからつかみました。
そして、私と目を合わせることもなく、所長に背を向けて足早に出ていったのです。
その後、所長から後輩には改めて注意があり、私にも謝罪がありました。
一時は自分の責任だと思い込んでいましたが、冷蔵庫の扉のおかげで、本当のことが明らかになりました。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














