
新潟県十日町市に佇む、「美人林(びじんばやし)」。
その名の通り、すらりと伸びたブナの木々が織りなす美しい風景は、多くの写真愛好家や観光客を魅了しています。
しかし、その詩的な名前とは裏腹に、口コミサイトには「可もなく、不可もなく」「まあまあ普通かな…」といった、少し辛口な評価が少なくありません。
果たして、美人林はわざわざ訪れるほどの価値がある場所なのでしょうか?
その真相を探るべく、実際に訪れた人々のリアルな口コミを徹底的に調査。
すると、“ただの森”という評価を覆す、この森がたどった壮絶な過去と、その奇跡的な再生の物語が見えてきました。
“ただの森”ではなかった。一度は“丸裸”にされた、奇跡の再生ストーリー
まず、美人林の評価が分かれる理由。
それは、この森が持つ“物語”を知っているかどうかにありました。
何も知らずに訪れると、確かにそこは「とても清々しい林」かもしれません。しかし、この森の成り立ちを知ると、目の前の景色は全く違う意味を持ち始めます。
「大正末期、木炭にするため全て伐採され裸山になりました。ところが翌年、この山のブナが一斉に芽生えて成長していきました」
そう、今私たちの目の前に広がるこの美しいブナ林は、約100年前に一度、人間の手によって完全に伐採され、“丸裸の山”になった場所なのです。
しかしその翌年、残された根からブナの若木が一斉に芽吹き、奇跡的に再生を遂げました。
すべての木々が同じ時期に再生したため、その立ち姿は驚くほど均一で、すらりと天に向かって伸びています。
魅力は“四季”にあり。訪れるたびに表情を変える、四つの顔
美人林のもう一つのすごさは、訪れる季節によって全く違う顔を見せてくれる点にあります。口コミには、それぞれの季節の美しさを讃える声が溢れていました。
【春】「4月下旬にはまだ残雪が所々ありますが、すでに緑は生き生きとした色をしており、種類多くの野鳥の声もよく聞こえました。」
【夏】「ブナ林の中はとても涼しく、木漏れ日の林にいると疲れが吹き飛びました。(周辺より気温が2℃低いと言われております)」
【秋】「落ち葉の吹雪 見事でした。黄色いじゅうたんのようでした。」
【冬】「冬はまさに”銀世界”という言葉がぴったりな世界に。晴れた日には日の光を浴びた雪がキラキラと光ります。」
残雪と新緑が織りなす春、天然のクーラーのように涼やかな夏、黄金色の絨毯が広がる秋、そして静寂に包まれた冬の銀世界。
どの季節に訪れても、その時だけの感動が待っています。「また違う季節にもきたくなる」という声が多いのも、この場所が持つ奥深い魅力の証です。
知る人ぞ知る絶景スポット。水面に映る“逆さ美人林”
美人林を訪れたなら、ぜひ立ち寄ってほしい場所があります。それは、林の中に佇む小さな池です。
「池に反射する紅葉が大変美しくまさに水鏡。」
「池に映る緑など、どれも印象的でした。」
風のない穏やかな日には、池の水面が鏡のようにブナの木々を映し出し、“逆さ美人林”という幻想的な光景を生み出します。
多くの写真家がこの一瞬を狙って訪れる、知る人ぞ知る絶景スポットです。
まとめ:「何もない」が最高の贅沢。
美人林。そこは、スリル満点のアトラクションや、豪華な施設がある場所ではありません。
しかし、そこには都会の喧騒から離れ、静かに自然と向き合える、何にも代えがたい贅沢な時間があります。
「木々の多い関東北部山沿いに住んでいる自分としてはそれほどの感動はなかった」という正直な声があるのも事実。しかし、一度“丸裸”になった山が、100年の時を経てこれほど美しい姿を取り戻したという奇跡の物語を知れば、目の前の木々一本一本が、きっと愛おしく見えてくるはずです。
「何もない」からこそ感じられる、生命の力強さと美しさ。それを味わいに行くだけでも、訪れる価値は十分にあります。